メジロドーベルを訪ねて~レイクヴィラファーム
G1・5勝の名牝メジロドーベルを訪ねた。現在は虻田郡洞爺湖町のレイクヴィラファームで繁殖生活を送っている。
「今年18歳になりますが、年齢以上に若くて元気です。父メジロライアンは今年25歳、昨年亡くなった母メジロビューティーは29歳で大往生。長生きの血統ですし、これからも丈夫に繁殖生活を送っていけるでしょう。現在はダイワメジャーを受胎しています。」と、近況を語るのは同牧場の岩崎義久さん。放牧地では娘のメジロルルドと一緒に過ごしている。
「これだけの成績を残した馬ですが、放牧地の群れでは威張ることはなく、控え目なんです。子煩悩で、生まれた仔馬にべったり寄り添うタイプ。それでも離乳後は早く気持ちを切り替えていますね。」と、母としての個性を明かす。いざ対面するとやはりG1馬。独特のオーラと風格を帯びて、ウォーキングの足取りは力強い。エアグルーヴ、エリモエクセル、キョウエイマーチ、シーキングザパール、ファレノプシス…競い合った牝馬たちも立派なお母さんになった。血統表にはメジロの活躍ファミリーに、ネヴァービート、ノーザンテースト、パーソロンと、古き日本競馬を支えたトップクラスのサイアーの名。外国輸入牝馬の仔が猛威を振るう今、なでしこ・ドーベルのプロフィールにしみじみとする。
繁殖牝馬としてはこれまで8頭の仔を出産。4番仔メジロシャレード(牝、父マンハッタンカフェ)、5番仔メジロオードリー(牝、父スペシャルウィーク)、6番仔メジロダイボサツ(牡、父ディープインパクト)が勝ち上がり、ダイボサツは現500万クラスに在籍している。初仔メジロヒラリー(牝、父エルコンドルパサー)、2番仔メジロルルド(牝、父サンデーサイレンス)は不出走で繁殖入りし、シャレード、オードリーも現在は繁殖牝馬として生活している。残念だったのは3番仔メジロアレグレット(牝、父アグネスタキオン)。新馬、未勝利で好走していたものの6戦目で故障し、この世を去ってしまった。
「仔出しは文句ないし、素晴らしい素材の馬が生まれていることは確かです。今年は父ゼンノロブロイの牝馬が生まれました。顔つきや背中の感じは母に似ていますね。今までの兄姉と比較しても、一番似ているかもしれません。」(岩崎さん)
後継牝馬に恵まれ、ドーベルの孫世代にも注目が集まっている。母メジロシャレードの1歳(牡、父シンボリクリスエス)、母メジロルルドの1歳(牡、父ジャングルポケット) はセレクトセールに上場され、ともに2,520万円の値がついた。メジロルルドは右目が見えないながらも、母として毎年出産。今年の当歳、父ハービンジャーの牡馬は、「父の産駒らしく立派な体つき。すごく楽しみな一頭です。」と、岩崎さんに言わしめる。
メジロ牧場解散から一年半が経過。洞爺に白と緑のカラーはなくなってしまったが、幾多の名馬を送ってきた歴史は、競馬ファン、ホースマンに深く刻み込まれている。レイクヴィラファームの幕開けに、“メジロ”ブランドの結晶、ドーベルの存在が頼もしい。岩崎さんの言葉が前を向く。「新しい牧場となって、馬の飼養方法を変えました。今までとは違った馬づくりの成果を、ドーベルの仔でも出していきたいです。」