メジロダーリングを訪ねて~レイクヴィラファーム
初代アイビスサマーダッシュ(G3)の覇者で、芝短距離のスペシャリストと渡り合った牝馬、メジロダーリングを訪ねた。
種牡馬、競走馬として高いスプリント能力を示したグリーンデザートの血を引く彼女は、メジロ牧場生産の持込馬。母は愛国G3ウイナーで、母の父は米国三冠馬アファームド。1歳上の半兄リンピドは仏国G1を制している。1998年、美浦・大久保洋吉厩舎からデビューし、2~6歳までに34戦。芝スプリント重賞2勝を含む8勝を挙げ、日本遠征馬にとっては鬼門の香港スプリント(G1)にも挑んだ。中でも思い出されるのは第1回アイビスサマーダッシュ(G3)。本邦初・極上のスピード決戦「直線・芝1000m」で見せた電光石火の走りは、一瞬の隙も迷いもなく、0.1秒をスリリングに争った。後のG1馬カルストンライトオを破っての勝ち時計は「53秒9」。夏の新潟、電光掲示板の文字に燃えた。
繁殖牝馬としてはこれまで7頭の仔に恵まれた。初仔メジロアダーラ(牝、父フレンチデピュティ)は新馬、カンナS(2歳OP)を快勝し、阪神JF(G1)へ駒を進めた。2番仔メジロアリエル(牝、父サクラバクシンオー)も勝ち上がり、現在は共に繁殖入りしている。3番仔メジロローレンス(牡、父マイネルラヴ)は未勝利に終わったが、4番仔メジロカトリーヌ(牝、父メジロライアン)、5番仔メジロサンノウ(牡、父キングカメハメハ)はそれぞれ1勝を挙げて現役。初めてサンデーサイレンス系種牡馬と掛け合わせた6番仔リバーオリエンタル(牡、父ディープインパクト)は、残念ながら未勝利で足踏みしてしまった。
「子育ては上手で、つかず離れずといった感じですね。人にも馬にも強気な性格ですが、種付けやお産は全く問題ないです。現在はハービンジャーを受胎しています。」と、伝えてくれたのはレイクヴィラファームで管理する岩崎義久さん。放牧地の群れではボス的存在だそうで、最初にダーリングが食べる場所を選んでから、他の馬がポジションを決めるというのが馬同士の暗黙のルール。今年16歳となるが、体つきはしっかりしていて、勝ち気な目をしている。メジロの馬と言えば“長距離”というイメージが沸くが、こちらはいかにも短距離馬らしい。
繁殖仲間のメジロドーベル同様、孫世代にも好素材が生まれている。メジロアリエルが生んだ初仔の当歳馬は、今をときめくステイゴールドの牡馬。「まとまりのある、バランスのとれた体型をしていますね。初仔だけに小柄ですが、母の良いところを感じますし、楽しみにしています。」と、岩崎さんは期待している。アダーラ、アリエル、2頭の後継牝馬にも注目していきたい。
「脚元に難がある仔が続いて、結果を出せていませんが、ダーリング自身は元気に繁殖生活を送っています。いつか母仔重賞制覇を叶えたいです。」と、岩崎さんは意気込む。気丈な彼女なら、粘り強く励んでくれるだろう。
血統表には“メジロ”カラーの緑の縁。グリーンデザートはBMSとしても優秀で、現オープン馬サドンストーム、世界各国で活躍しているラッキーナインがそう。競走成績、血統に裏付けされた優れた速力は、近年の高速競馬に大きなアドバンテージ。仔、孫に注入されたその遺伝子は、大器誕生の源となるのではないか。