カンパニーを訪ねて~社台スタリオンステーション
あの秋、カンパニーは“神”だった。
2009年秋。天皇賞(秋)(G1)を制して史上初めて8歳馬としてG1レースを制したカンパニー。その記憶も覚めやらないうちにマイルチャンピオンシップ(G1)で自身の記録を3週間塗り替える最高齢記録を樹立した。
毎日王冠(G2)ではウオッカをやぶり、中山記念(G2)ではドリームジャーニーの猛追を退けた。キャリアを積むごとに自在性を増し、末脚に磨きがかけ、強い相手と戦うことで自身もその強さを身に付けていった。長い長い現役生活の中で驚くべきパフォーマンスを発揮できたのは、馬自身がタフだったということはもちろんだが、馬に過度なストレスを与えずに、慎重なローテーションを選んだ関係者の賜物だったような気がする。
あれから3年。すっかり種牡馬としての雰囲気を身にまとったカンパニーは社台スタリオンステーションにいる。動かない。5分、10分、15分。あきらめて他の馬のもとへと足を運び、戻ってきても同じ場所にたたずんでいた。その間、約60分。夏は木陰から出ようとせず、寒さが厳しくなると日のあたる場所から動かない。と、突然トコトコと歩き出したと思ったら、また同じ場所に戻ってきた。彼なりに、気を使ってくれたのだと理解した。
暑さに弱いと報じられた現役時代。調べてみれば厳寒期の出走も3歳1月のデビュー戦と2戦目のきさらぎ賞(G3)、7歳時の東京新聞杯(G3)の3戦だけだった。暑さと寒さに弱いのではなく、嫌いだったのだろうと思う。
そんなカンパニーの初年度産駒が、いよいよ来年からデビューする。「とてもバランスのよい馬が多く、産駒の評価は高いですよ」というのは社台スタリオンステーションの徳武英介さんだ。
「ミラクルアドマイヤからトニービンへとさかのぼる血統で、トニービンの面影を残しつつノーザンテーストやクラフティプロスペクターといった堅実な血統も馬体に表現されています。それに、とにかく健康です」とアピールする。トニービン、サドラーズウェルズ、ノーザンテースト、ミスタープロスペクターといった名種牡馬がちりばめられた血統表にはバレークイーンやクラフティワイフといった良質繁殖牝馬の名も見える。まさに「サンデーサイレンス以外の名血が集められた」という構成になっている。
「晩成のイメージがあるのかもしれませんが、3歳春にオープン入りしてから、ずっとトップクラスで走り続けた馬です。仕上がりの早い馬もいるでしょうし、成長力に富んだ馬もいるはず。そういう意味でも産駒のデビューがとても楽しみです」と期待に胸を膨らませている。