馬産地コラム

ネオユニヴァースを訪ねて~社台スタリオンステーション

  • 2012年10月09日
  • ネオユニヴァース
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    ネオユニヴァース

 流れるような背中のラインに小さな頭部。美しい皮膚。新緑に映える馬体が美しい。「サラブレッド」という言葉はこの馬のためにあるのではないかとさえ、思う。それがネオユニヴァースという馬だ。

 牧場時代は、5月21日生まれということを感じさせない雰囲気を持った馬だったという。与えたメニューを次々とこなし、2歳10月に栗東の瀬戸口厩舎に入厩すると、3週間後にはゲート試験に合格。文字どおりにエリート街道をひた走ってきた。新馬戦を楽勝し、続く中京2歳Sこそキャリア豊富な馬たちに不覚をとったが、その後は皐月賞(G1)、そしてダービー(G1)まで一度も他馬の後塵を拝することなく頂点へと登りつめた。

 手綱をとった陽気なミルコ・デムーロ騎手が「勝利をイメージできたのは?」という問いに対して「イタリアの自宅を出るとき」と答えたのは有名な話だ。

 しかし、その後はやや運に見放されたようなレースを続けてしまう。2冠馬として勇躍挑んだ宝塚記念(G1)はスタートのミスに泣き、菊花賞(G1)は距離の壁に阻まれた。ジャパンカップ(G1)でも出走メンバー中最速のあがりタイムを記録したものの前を行く馬をつかまえきれずに4着と敗れ3歳シーズンを終了した。

 捲土重来を期して4歳シーズンは大阪杯(G2)から始動。ここを快勝したものの、天皇賞(春)(G1)では再び距離の壁に泣かされ、しかも宝塚記念(G1)を目指す過程で脚部不安を発症。引退を余儀なくされてしまう。

 その夏から5年。ネオユニヴァースは衝撃の種牡馬デビューを果たす。初年度産駒アンライバルドが皐月賞(Jpn1)を制して史上6組目の皐月賞制覇を成し遂げると、続くダービー(Jpn1)は同じく初年度産駒のロジユニヴァースが不良馬場をものともせずに同じく史上6組目の父仔制覇を成し遂げた。2冠(以上)馬が父仔2冠を成し遂げたのは、シンボリルドルフ~トウカイテイオーに続く史上2例目のこと。異なる産駒で2冠を勝利したのは、長い競馬史上でもちろん初めてのことだ。さらに2年目産駒のヴィクトワールピサが皐月賞(G1)を制覇。皐月賞勝馬が、種牡馬として2頭の皐月賞馬を出したのも、初めてのことだった。

 そんなネオユニヴァースだから驚異的なペースで後継種牡馬を送り続けている。アンライバルド、ヴィクトワールピサ、そして未完の大器と言われたトーセンファントム。「これだけ早いペースで後継種牡馬を量産するということがすごい」と同スタリオンスタッフも目を丸くしている。

 それだけではない。「当初は牝馬が走らないと言われていましたが、2011年はイタリアンレッドがサマー2000シリーズで初代女王になりました。またダートがダメとも言われましたが、昨年は中央地方あわせて136頭のダート勝馬を出しました。この数字はクロフネと並んで年間最多タイの数字でした」という。

 今年は孝行息子たちのスタッドインで配合牝馬を分け合うようなかたちになったが、それでも137頭の牝馬を確保した。「ヴィクトワールピサの活躍で、ネオユニヴァースの血が世界に通じるものだということが証明されました。まだ12歳。とてつもない可能性を秘めた馬だと思っています」と期待に胸をふくらませている。