馬産地コラム

スキャンを訪ねて~日高スタリオンステーション

  • 2012年09月25日
  • スキャン
    スキャン
  • 高齢の域に達してきたが、一年でも長い種牡馬生活を目指している
    高齢の域に達してきたが、一年でも長い種牡馬生活を目指している
  • 孫世代のテイクアベットが今年、交流重賞制覇
    孫世代のテイクアベットが今年、交流重賞制覇
  • 今後も子孫繁栄に力を入れていく
    今後も子孫繁栄に力を入れていく

 日高スタリオンステーションのベテラン種牡馬、スキャン(アメリカ産)を訪ねた。24歳を迎えた今年も元気に種牡馬生活を続けている。

 「多少の老いはありますが、年齢ほどではないですね。昔から気の強い馬で、今もチャカチャカするところはあります。脚元も内臓も問題ないし、体調面はいたって良好です。」と、近況を語るのは、日高スタリオンステーションの三好正義場長。ベテラン同士の意思疎通に、曇りはない。

 お盆を過ぎると涼しくなる北海道だが、珍しく今年は夏終盤から暑さが盛り返した。海岸から近い日高スタリオンステーションは海風に恵まれているものの、ムンとした放牧地を飛び交うアブは馬を刺激する。三好場長は、「外に放してもアブを追い払うのに大変で、ゆっくり草を食べられませんからね。ストレスがかからないように、9月も早朝に放して、午前10時ぐらいには集牧しています。」と、管理方法を伝える。涼しい時間帯を放牧に充て、気温の上がる日中は厩舎でリラックス。その効果でスキャンを含めたどの繋養馬も表情は生き生きしていて、夏バテの様子はない。三好場長は、「これから過ごしやすい季節になりますし、ふっくらさせて冬に備えたい。スキャンは食欲旺盛で、歯もしっかり。そういう馬は高齢でも種付けをこなしていける。ナイスダンサーもラッキーソブリンもそうでした。」と、過去に携わった種牡馬を引き合いに出しながら、未来を読んでいる。

 現役種牡馬リストを眺めてみると、スキャンより年上はアジュディケーティング、ブライアンズタイムあたりで、数えるほどしかいない。スキャン自身の種付頭数は2009年まで二桁をキープしていたが、ここ3年は一桁と寂しい状況だ。

 「種付けは上手いし、まだまだ頑張れる状態なのですが、繁殖牝馬一頭集めるのもゆるくない(容易ではない)ですからね。例えば、一昔前だったら50万円ぐらいの種付料なら“安い”という感覚でしたけど、今では“高い”という感覚でしょう。」(三好場長)

 数十万クラスの種付料の競合馬が増え、現状は苦戦を強いられているが、築き上げた実績はそう簡単に抜かれるものではない。これまで18世代、1,000頭近い産駒がデビューし、テイエムメガトン、タマモストロング、マチカネワラウカドといったダートの強豪を主力に、小倉でグランドスラムを決めたメイショウカイドウ、快速馬ケイティラブ、ポートジェネラルなど、幾多のタイトルホースを送り出した。また、特筆すべきはミドルクラスでの堅実な好走。中央・地方で650頭以上の勝ち馬、2,500回もの勝利数をはじき、産駒の収得賞金は100億円を突破した。一頭一頭の勝利が実を結び、どんな馬でも高い確率でヒットを打てる、そんなスキャンの身上がロングセラーを叶えた。

 「手頃な種付料で、平均して1勝、2勝できる馬を出し続けたことが、長い種牡馬生活につながりました。」(三好場長)

 最近では母の父としても結果が出て、2008年にレッドアゲート(父マンハッタンカフェ)がフローラS(Jpn2)を制し、牝馬クラシックに挑戦。今夏にはテイクアベット(父サクラバクシンオー)が交流重賞・サマーチャンピオン(Jpn3)を逃げ切り、ダートスプリント界の新星に躍り出た。サンデーサイレンス系肌馬に配合可能な血統背景で、大種牡馬ミスタープロスペクター、カーリアンの全妹の血が宿るのだから、大化けする孫が出ておかしくない。

 「これからも一頭でも多く種付けしていきたいですね。産駒は芝ダート問わないし、2歳で重賞を勝つ馬もいれば、7歳、8歳まで息長く活躍する馬も多いです。まだまだ期待を持っていますよ。」と、三好場長は意気込む。残る勲章はやはり産駒の中央G1制覇。特大アーチが来る日を願って、ラストスパートの音は止まない。