ファルブラヴを訪ねて~社台スタリオンステーション
2012年、サマー2000シリーズのチャンピオンとなったトランスワープの父、ファルブラヴを社台スタリオンステーションに訪ねた。
かつて、ノーザンテーストが晩年を過ごした放牧地に14歳になったファルブラヴがいた。
厩舎と放牧地がつながっていて、自由気ままに過ごせるVIP放牧地だ。以前は闘争心をむき出しにしていたイメージもあるのだが、明るい鹿毛のふっくらとした馬体で放牧地を歩き回っている。忙しい春、そして暑い夏にもまったく負けていなかったことがわかる。ジャパンカップ(G1)優勝時に538キロ。翌年の香港カップ(G1)優勝時には547キロだった馬体が、さらにたくましさを増している。
「少し、ダイエットさせた方が良いかもしれません。でも、とにかく健康でよく食べるんです。なかなか絞れないです」とスタッフの方が苦笑いを浮かべる。
“夏に強いファルブラヴ”“牝馬が走るファルブラヴ”。いつの間にかそんなイメージが定着したが、今年はアイムユアーズが春先のフィリーズレビュー(G2)に優勝し、牝馬ではないトランスワープ(セン馬)が2000mの距離で活躍してくれた。
「本馬自身はジャパンカップ(G1)の勝馬でもありますし、長い距離を得意としたのですが、スピードがありすぎて短い距離での活躍馬が多かったようです。それでも、こうやって2000mの距離で強い競馬をしてくれる馬が出てきてくれると嬉しいですね。年齢的にも、もう一花、ふた花咲かせて欲しい存在ですから」と事務局も相好を崩している。
現役時代は5か国で合計8つのG1レースに勝った国際的な名馬だった。しかし、あまりに国際的すぎて世界中からオファーが殺到。南半球のみならず、英国からも熱烈ラブコールがあって日本での種付けを留守にしたこともある(2005年)。
「その世代がワンカラット世代なんです。持込馬として輸入された少ない産駒の中から2010年のサマースプリントチャンピオンになったのだから、すごいことだと思いました。産駒の活躍で、配合数が増え、これからは日本での産駒がどんどんデビューしますから、楽しみは広がります」という。昨年は164頭の牝馬に配合し、この春もまた145頭の牝馬がファルブラヴの血を求めた。
振り返れば初年度産駒のトランスワープから現3歳のアイムユアーズまで5世代連続でJRA重賞勝馬を輩出。ほかシャトル先のオーストラリア、イギリス、アメリカでも重賞勝馬の父としてその名を残し、この秋はアイムユアーズ、そしてトランスワープが念願ともいえるG1獲りに挑む。世界的な名馬が、いよいよ、その本領を発揮し始めている。