ニッポーテイオーを訪ねて~うらかわ優駿ビレッジAERU
軽快な逃げ足を武器に、安田記念(G1)、天皇賞(秋)(G1)、そしてマイルチャンピオンシップ(G1)を制して1987年の最優秀4歳以上牡馬に選ばれたニッポーテイオーを訪ねた。
ここは、浦河町にある優駿ビレッジAERU。日常を少し離れ、馬と自然にふれあい、そして幸せに会える場所。
29歳になったニッポーテイオーと27歳のダイユウサク、23歳のヒシマサルと22歳のウイニングチケットが同じ放牧地で穏やかな時間を過ごしている。それぞれ、時代を代表する馬たちで、年齢も比較的近いのだが現役時代は1度も顔を合わせたことのない馬たちの豪華競演だ。
ニッポーテイオーは、その4頭のまとめ役だという。若く、体も大きなヒシマサルと元気あふれるウイニングチケットがじゃれあいながら放牧地を走り、そしてポツンと離れたところでダイユウサクが草を噛む。ニッポーテイオーは若い馬たちに睨みをきかせながら放牧地での秩序を守っている。
「1番年上ですけど、1番威張っています。体力は若い馬に負けるのかもしれませんが、リーダーなんでしょうね」というのは島村博マネージャーだ。
群れで生活するウマにとって、リーダーは不可欠な存在だ。移動するスピード、そして方向性を決めるという。
そういえば、現役時代のニッポーテイオーは、いつも集団の先頭を走っていた。「やんちゃなところが今も残り、捕まえようと思ってもなかなか捕まえさせてくれません」と同マネージャー。そんなところも現役時代そのままだ。圧巻だったのは4歳秋。天皇賞(秋)(G1)、そしてマイルチャンピオンシップ(G1)では逃げて後続を突き放し、翌年春の安田記念(G1)でも、そのスピード能力を如何なく発揮した。
そんなニッポーテイオーだがマネージャーの言葉を借りると「時間に正確で、律儀な馬」だという。放牧を終える時間になると、自分から出入り口のところにやってきて1番先に厩舎に入らないと不満そうにするらしい。そんなところもボスたる所以だ。
「29歳という年齢のほかは心配するところはありません。食欲は旺盛なんですが、賢い馬で、食べ過ぎることもしないし、自分で体調管理ができる馬です」というのが健康の秘訣かもしれない。
慎重に手綱を引かれ、放牧地を出ようとしたとき「まだ帰る時間じゃない」と言わんばかりにやや抵抗したが、すぐに状況を理解して写真撮影に協力してくれた。撮影後は軽快な足さばきで放牧地の“マイポジション”へと戻っていく。そんなニッポーテイオーは、どこか心強い。
今でも、夏のオンシーズンになれば多くのファンが足を運ぶという。北海道の夏は短いが、今年もぜひ、ニッポーテイオー、そして個性豊かな馬たちに会いに来て欲しい。