馬産地コラム

スウェプトオーヴァーボードを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション

  • 2012年08月28日
  • スウェプトオーヴァーボード
    スウェプトオーヴァーボード
  • 牧場での呼び名は「スウェプト」
    牧場での呼び名は「スウェプト」
  • 今年は80頭以上の繁殖牝馬を集めた
    今年は80頭以上の繁殖牝馬を集めた
  • 産駒パドトロワが夏の短距離重賞を2連勝
    産駒パドトロワが夏の短距離重賞を2連勝

 日高町のブリーダーズスタリオンステーションで種牡馬生活を送るスウェプトオーヴァーボード(アメリカ産)を訪ねた。この夏は産駒パドトロワが短距離重賞アイビスサマーダッシュ(G3)で1着、2歳のコスモシルバードが函館2歳S(G3)で2着に好走し、秋に向けて楽しみを広げている。

 お話を伺ったのは同スタリオンの松下敦典さん。2007年12月、社台スタリオンステーションから移動して以来、スウェプトオーヴァーボードの担当をしている。「健康状態はいたって良好です。獣医さんにかかることも少なく、丈夫な馬ですね。今シーズンの種付けも順調で、多い時は1日3、4回こなしました。小柄な馬なので、大きな繁殖牝馬相手だとやや苦労する場面もありますが、タフにクリアしています。」

 種牡馬として日本導入後は毎年3ケタの繁殖牝馬を集め、10シーズン目の今年も80頭以上をマーク。500kg台の牝馬が増えた今、均整のとれた仔を誕生させるために、スウェプトオーヴァーボードのもとには大型牝馬が相次いでいる。ディープインパクト、ステイゴールド、目下大人気の種牡馬にも共通する小柄さは、今では一つのニーズかもしれない。

 8月は虫に追われる日中を避け、朝の涼しい時間帯だけを放牧にあてている。芦毛は同スタリオン唯一で、その馬体は緑の大地にひときわ映える。牧場での呼び名は「スウェプト」。広い放牧エリアでも遠くから一目で居場所がわかるのが、スウェプトだ。

 「白くて目立ちますが、周りの馬は見慣れていて、特に驚くようなことはありません。普段からチャカチャカするところがあり、テンションの高いタイプなので、そのあたりを留意しながら管理しています。発達した筋肉はアメリカの馬らしさを感じますね。」と、松下さん。厩舎から放牧地間の移動も小走りで進むが、これがこの馬のペース。つくべき筋肉は盛り上がっており、優れた瞬発力の源を伝えている。

 現役時代はアメリカで走り、ダートG1のメトロポリンタンH(G1)、エインシェントタイトルH(G1)を優勝。通算20戦のうち16戦で3着以内に入る堅実さで、短距離~マイルを得意とした。特筆すべきは芝G3勝ちがある点で、芝ダートを問わない器用さは産駒にも受け継がれている。

 これまで日本では300頭以上の勝ち馬を送り出し、アーバンストリート(シルクロードS(G3))、ドリームスカイ(東京ダービー)、エーシンブラン(兵庫チャンピオンシップ(Jpn2))らが重賞を制している。とりわけサンデーサイレンス系牝馬との掛け合わせが好結果を生み、父同様に芝ダートの短距離戦を中心に威力を発揮する。速い流れでも緩急を効かせて、最後に白い弾丸となって飛んでくる馬は、よくスウェプトオーヴァーボード産駒だったりする。

 「父に似て小柄な馬が多く、仕上がり早で2歳戦から動ける強みがあります。一方でパドトロワのように5歳になって重賞を勝つ馬も出てきました。配合次第では500kgを超す馬も、中距離をこなす馬も出ていますね。手頃な種付け料に加え、サンデー系牝馬との好相性、スピードを生かした堅実な成績が生産者を惹きつけています。」(松下さん)

 今夏の活躍を受けて、秋の大舞台へ期待は膨らんでいる。まずはパドトロワが先陣を切って、スプリンターズステークス(G1)に登場するだろう。昨年2着の悔しさをバネに、今年は優勝候補として人気を集めるに違いない。松下さんは、「これからも一頭一頭、確実に繁殖牝馬を集めていきたいです。毎年のように中央・地方で重賞馬が出ていますし、あとはG1馬を出せれば最高ですね。」と、笑顔で話す。産駒の金星を真っ先にスウェプトに伝える日を心待ちにしている。