馬産地コラム

エイシンサニーを訪ねて~様似共栄牧場

  • 2012年08月24日
  • エイシンサニー
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   功労馬。とりわけ功労繁殖牝馬への取材は、どこか神妙な心持ちになる。

  一瞬の輝きに全てを燃焼させたような競馬場での激しさ。その激しさをすべて注ぎ込み、母親としての役割を終えたあとの牝馬はどこか悲しく、小さく見える。まるで抜け殻になったような姿は、かつてを知るものにとっては寂しい限りだ。

  そんな自分勝手な概念が、エイシンサニーによって吹き飛ばされた。

  25歳になったエイシンサニーは、22年前、世代の頂点にたったときと同じように緑の芝の上を楽しそうに駆けていた。「この春も発情がありました。それくらいに元気なんです」と同馬が暮らす様似共栄牧場の辻陽さんが教えてくれた。

  「当牧場に移動してきたのが2002年、15歳のときです。なかなか思うように受胎してくれず2007年にエイシンプレストンの牡馬(スルスミポイント)を生んだのを最後に繁殖生活を引退しました。それからは、ここで功労馬として過ごしています」というものの、現役時代、400キロそこそこだった小さな体は当時の面影を残すままだ。

  「競馬場でも、それから牧場でも激しい馬だったと聞いています。たしかに、激しい馬はありますが、用心深い性格なのかと思います。馬自身が納得すれば手こずることもないんですよ」とサラリ。「そういった気性以上に頭を痛めたのは連続して受胎してくれないということでした」という。

  たしかにエイシンサニーは12歳のときに生んだエイシンツヨシオーを最後に、連続して産駒を生んでいない。「毎年、はっきりと発情が来るように馬自身は元気いっぱいなのですが、なかなか受胎してくれない。生産者としては悩ましい限りでした」と当時の苦悩を語ってくれた。

  現在は、元競走馬だという年上の乗用馬とともに放牧されている。互いにある程度の距離をとりながら過ごしているというが、どちらかの姿が見えなくなると、互いに寂しがって落ち着きをなくすというくらいに仲が良い。よきパートナーにも恵まれて、心身ともに健康な日々を過ごしている。

  「いまでも夜間放牧が出来るくらいに元気なんです。ファンの多い馬で、毎年のように足を運んでくださる方もいます。そういった方たちのためにも、少しでも長生きして欲しいと願っています」。エイシンサニーはいっぱいの愛情に包まれて、すこやかな余生を送っている。