グラスワンダーを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション
JRAのテレビCMを見ていたら、グラスワンダーに会いたくなった。
沙流郡日高町のブリーダーズスタリオンステーション。そこに第40回宝塚記念(G1)優勝馬グラスワンダーがいる。
1999年7月11日。宝塚記念(G1)、あの日のグラスワンダーは、完璧だった。
レースの1週間前には前年秋にしのぎを削ったエルコンドルパサーのサンクルー大賞(G1)優勝のニュースがフランスから報じられ、同じ外国産馬としては負けられない背景があった。
この日の相手は同世代のダービー馬で、天皇賞(春)(G1)に勝ったスペシャルウィーク。そして同世代の皐月賞(G1)2着馬キングヘイロー。菊花賞馬マチカネフクキタル。1歳年下の皐月賞(G1)2着馬オースミブライトなど。すでに前年の有馬記念(G1)で同世代の2冠馬セイウンスカイや古馬代表のメジロブライトをやぶってはいたが、その勝利の価値を失わせないためにも、また遠く離れた欧州で頑張るエルコンドルパサーのためにも負けられない1戦だった。
最終的なオッズはスペシャルウィークが単勝支持率50.6%の1.5倍。グラスワンダーは2.8倍で、3番人気のオースミブライトは遠く離れた15.9倍。しかし、そうしたファンの思いはあっさりと裏切られる。早めに先頭にたったスペシャルウィークに襲い掛かるグラスワンダー。あとはテレビCMの通りだ。ほとんど並ぶ間もなく交わすとゴールでは3馬身の差をつけていた。強いということは美しい。そんなことを教えてくれたのがグラスワンダーだ。
あれから13年。現役時代に比べると、その美しい栗毛の馬体には貫禄のようなものが備わったが、重心が低い体型は当時のままだ。初夏の陽射しに新緑とのコントラストが幻想的な雰囲気を醸しだしている。
「食べることと砂遊びが大好きな馬です。放牧地を走ることはほとんどありませんが、動くのは好きな方だと思います。ただ、もう少しダイエットが必要かもしれません」とスタッフが苦笑いするくらいに体調は良さそうだ。
そんな充実した種牡馬生活を支えているのが、産駒の活躍だ。産駒をデビューさせた2004年からの連続重賞制覇は「8」。昨年はアーネストリーが宝塚記念史上初となる父仔制覇を達成。
そんな頼もしい一面とは対照的に、普段はとてもおだやか。人間の姿を見つけると寄って来てくれる。そんな性格も手伝って、夏休みシーズンともなれば、この馬を目当てに足を運ぶファンもあとを絶たないという。
すでに産駒のスクリーンヒーローとサクラメガワンダーがスタッドインを果たし、この美しいグランプリホースの血を広げている。まだ17歳。産地の期待を背負って、これからも活躍を期待されている。