馬産地コラム

タヤスアゲインを訪ねて~ローリングエッグスクラブ ステーブル

  • 2012年06月05日
  • タヤスアゲイン
    タヤスアゲイン
  • やんちゃな性格
    やんちゃな性格
  • まだ老いは感じられない
    まだ老いは感じられない
  • タヤスレミグランと仲良く暮らしている
    タヤスレミグランと仲良く暮らしている

 1998年、青葉賞(G3)の勝ち馬タヤスアゲインを訪ねた。現在は新ひだか町静内のローリングエッグスクラブ ステーブルで余生を送っている。

 タヤスアゲインは1995年生まれの17歳。サンデーサイレンスの4世代目産駒で、同期にはスペシャルウィーク、セイウンスカイ、エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイローといった名馬が並ぶ。デビューは夏の新潟で、2戦目で勝ち上がるとトントンとOP特別を連勝して頭角を現す。休養を挟んで3歳から重賞へ挑み、アーリントンC(G3)、スプリングS(G2)でともに3着。大一番、皐月賞(G1)ではセイウンスカイの逃げに屈し、8着に敗れた。

 それまでマイルで2勝を挙げていたが、NHKマイルC(G1)へは向かわず、中2週で青葉賞(G3)へ駒を進めた。タヤスツヨシで日本ダービー(G1)を制した横瀬オーナーの思いが馬名にも、その臨戦過程にも表れているようだった。レースでは3番手から抜け出す正攻法の競馬で、最後は迫りくるメジロランバート、エスパシオを競り落として念願の初重賞制覇を飾った。

 日本ダービー(G1)では皐月賞馬セイウンスカイを見る形でレースを進めたが、スペシャルウィークの強烈な決め脚に屈し、1冠目と同じく8着。残念ながらその後は満足に競走生活を送れなかったが、今も語り継がれる最強世代のクラシックを駆け抜けた一頭として、記憶に刻んでいるファンも少なくないだろう。

 「体調はすごく良いですよ。放牧地ではパートナーのタヤスレミグランにちょっかいを出したり、物見をしたりしていますが、変わらず元気に過ごしています。」と、近況を語ってくれたのは同牧場の宮本直美さん。放牧地では長らくタヤスレミグランと放牧している。宮本さんは、「1頭でいるよりも2頭の方が運動量は増えますし、相性も良くてリラックスしています。以前は兄弟のような関係でしたが、今では父子のような関係です。」と、深い絆を伝える。5歳年上で落ち着きのあるタヤスレミグランが、やんちゃなタヤスアゲインに対して、絶妙なバランスを作っている。

 改めて現役時代の写真を見ると、ひと際目につくのはそのピンクのメンコだ。タヤスアゲインを管理していた山内研二厩舎の馬は、山内家の家紋がついたピンクのメンコを被ることで知られる。イシノサンデー、シルクプリマドンナ、アローキャリー、チアズグレイスのように、このトレードマークをつけた馬は若駒時からタフで、激しい闘争心を武器にクラシックで力走した。2歳時に早々と4勝し、叩き合いの末に重賞を制したタヤスアゲインも、山内厩舎らしさを感じる一頭。功労馬となった今も、そのお似合いのメンコを被せたくなる。

 現在は朝4時30分頃から夕方までを放牧時間に充てている。牧場は静内の山奥深い場所にあり、虫の声が響く静かな環境だ。

 「夏に向けて気温の上昇に注意しながら放牧していきます。これからも長生きさせていきたいですね。パートナーのタヤスレミグランにも、同じ思いです。」と、宮本さんは優しい眼差し。“2頭一緒で元気な生活”が健康維持のキーと語っている。