馬産地コラム

ロージズインメイを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2012年05月07日
  • ロージズインメイ
    ロージズインメイ
  • 種牡馬として風格が出てきた
    種牡馬として風格が出てきた
  • 産駒の活躍で交配頭数は一気にV字回復
    産駒の活躍で交配頭数は一気にV字回復
  • 忙しい春を迎えている
    忙しい春を迎えている

 2005年のドバイワールドカップ(G1)の優勝馬、ロージズインメイ(アメリカ産)を訪ねた。この春、3世代目となる産駒から待望のJRA重賞勝馬を輩出し、鳴り物入りで導入された初シーズン当時の注目度を蘇らせている。

 ロージズインメイの繋養先は新冠町のビッグレッドファーム。広々とした放牧地で、せっせと体を動かしている姿を目にする。「種牡馬として充実一途、元気一杯ですね。12歳となり、風格も出てきました。気の強さはありますが、人に対して悪さはしませんし、扱いやすいですよ。病気もせず丈夫な馬です。」と、近況を語るのは同牧場の蛯名聡マネージャー。現在は1日3頭の種付けをコンスタントにこなしている。

 「コスモオオゾラが種付シーズン本格化前に重賞を勝ってくれて、ロージズインメイにとって追い風になりました。その後は交配の問い合わせが殺到し、4月半ばで80頭に達する繁殖牝馬を集めています。」と、明るい。ここ3年は交配頭数3ケタを切っていたが、じわじわと産駒成績が目立ち出し、“今年は150頭のメドは立っています”と、V字回復は濃厚だ。

 現役時代は13戦8勝。4歳時からメキメキと頭角を現し、重賞勝ちを含む5連勝で挑んだブリーダーズカップクラシック(G1)では2004年エクリプス賞年度代表馬となるゴーストザッパーの2着に敗れたが、翌年のドバイワールドカップ(G1)では他の馬を寄せ付けない圧倒的な走りで栄冠を手にした。

 日本ではこれまでに300頭近くがデビューし、芝短距離でオープンクラスまで出世したドリームバレンチノや逃げ脚を武器に菊花賞(G1)で5着に好走したコスモラピュタ、函館2歳S(G3)僅差2着のマイネショコラーデらを送っている。

 「母系の特徴をよく伝える馬なので、様々なタイプを出しています。全体的にはしぶとさが身上で、底力に長けています。ロージズインメイ同様に成長力も期待できるので、息長い競走生活を送れるはずです。」と、蛯名マネージャーは産駒像を語る。ロージズインメイ自身はダートで素晴らしいパフォーマンスを発揮した馬だが、好成績を収めている産駒は芝馬が多く、導入当初の“日本の芝でもやれる”という目論みは「お見事!」と言わんばかりだ。

 「ありがたいことで昨年以上に種付けが増えて、忙しい春を迎えています。引き続き馬の健康管理には気を付けて、長い種牡馬生活を送らせてあげたいです。当面の目標はリーディングのトップ10に入ることですね。いろんな血統から強い馬が出た方が競馬も更に盛り上がると思いますし…コスモオオゾラは皐月賞(G1)でも上位争いしてくれたので、日本ダービー(G1)も楽しみにしています。」(蛯名マネージャー)

 ドバイワールドカップ(G1)の1勝も、弥生賞(G2)の1勝もこの馬の歩みに大きな変化をもたらせた。僅か一瞬のレース結果で馬の生涯を左右させる競馬の側面には、醍醐味やドラマだけじゃなく、儚さや残酷さも感じてしまう。良い方に転がれば万々歳だが、そうでない場合は非情な展開が待ち受けている。恐らくその両方を経験したロージズインメイにとって、続く戦いにもう怖いものはないだろう。これからどんな一戦がロージズインメイの未来を変えていくのか、その行方をじっくりと見守っていきたい。