馬産地コラム

ピットファイター~日高町家畜自衛防疫組合(旧五輪共同育成センター)

  • 2012年03月02日
  • ピットファイター
    ピットファイター
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    ピットファイター
  • 冬毛がしっかり生えて、寒さも平気です
    冬毛がしっかり生えて、寒さも平気です

 2004年の武蔵野ステークス(G3)、2005年のアンタレスステークス(G3)の勝ち馬、ピットファイター(社台ファーム生産)を訪ねた。昨年の東日本大震災の影響で、現在は一時的に日高町にある日高町家畜自衛防疫組合(旧五輪共同育成センター)で過ごしている。

 日高町へは昨年の9月6日に到着した。当時、青草にあふれていた放牧地は現在、一面雪に覆われているが、十分用意された投げ草を食べながら、雪上をのしのしと歩く。寒さの厳しい1、2月は最低気温がマイナス10度近くなることも多々ある馬産地だが、冬毛がしっかり伸びて、その表情は生き生きとしている。「リラックスしていますね。馬服を着せなくても問題ないほど、健康状態は良いですよ。」と、牧場スタッフは話す。

 ピットファイターは父Pulpit、母デアリングダンジグという血統。半兄Ecton ParkはアメリカG1の勝ち馬で、種牡馬としてもG1馬を送り出している。半妹デアリングハートは桜花賞(G1)3着、府中牝馬ステークス(G3)(2回)とクイーンステークス(G3)の優勝馬。半弟スマートカイザーはセレクトセール・当歳で1億8500万円(税抜)という高値で取引され、その後種牡馬入りしている。兄弟馬を辿っていくと、ピットファイターも種牡馬になっていても全然不思議じゃないほど、魅力の血統であることに気付かされる。

 現役時代は24戦10勝。意外にもデビュー戦は芝で、今となっては懐かしい“折り返しの新馬戦”では、あのテレグノシスを抑えて1番人気にも推された。3戦目からダートに矛先を変えると好走を重ね、4歳暮れまでに7勝してオープン特別も突破する。5歳以降はバリバリのオープン馬として一線級に挑み、交流重賞を含めて重賞を3勝。6歳時に参戦したフェブラリーステークス(G1)では、勝ち馬メイショウボーラーに0.6秒差まで詰め寄った。獲得賞金は2億円を超え、日本でデビューしたPulpit産駒としては出世頭として名を残している。

 引退後は福島県で余生を過ごしており、北海道の空気は久しぶりだ。共に移動してきた被災馬と一緒にじっくりと春を待つ。「今後も健康第一に、万全を期してお世話をしていきます。関係者、ファンの皆さん、安心してください。」と、牧場の皆さんは気を引き締めている。束の間の日高町での日々は、きっと心身に活力を加える期間になるだろう。