テイエムオペラオーを訪ねて~レックススタッド
2000年の年度代表馬テイエムオペラオー(杵臼牧場生産)を訪ねた。一昨年、閉鎖となったHBA門別種馬場より移動し、現在は新ひだか町静内のレックススタッドで種牡馬生活を送っている。
午前9時。冬装備の格好で長靴を履き、放牧地へと歩む。年が始まって2月までは朝8時から午後1時30分頃までが放牧時間。ちょうど寒さがピークとなる時期で、馬服を着せての毎日だ。カメラのシャッターを切るとその音がわかるのか、すぐさま耳を立ててくれる。
「頭の良い馬で、種付けも上手いですね。最近は少し気の強さを見せるようになってきました。夏の見学期間はお目当てのファンの方がたくさん来ていましたよ。」と、近況を語るのは同スタッドの泉山場長。今年は父となって10年目の春。98頭の花嫁を迎えた初年度に比べると、近年の交配頭数はやや寂しい数字に推移しているが、18億円もの額を稼いだ名馬には変わらず畏怖の念を抱かされる。
勝ちとったG1の数々については、改めて触れるまでもないだろう。各地で奮闘している産駒について紹介していきたい。JRAの平地重賞勝ちはまだだが、スタミナ十分の血を受け、ジャンプレースでテイエムトッパズレ、テイエムエースが重賞Vを果たしている。テイエムオペラオー自身はダートのイメージが薄い血統・キャラクターであるが、ダートで好成績を収める産駒が目立っているのが注目点。地方競馬でテイエムヨカドー(東京シンデレラマイル)、バグパイプウィンド(金盃)、タカオセンチュリー(アフター5スター賞)、カゼノコウテイ(瑞穂賞)らが重賞馬に出世している。産駒は距離適性の幅が広く、パワー勝負に長けている印象だ。
種牡馬入り後もファンの人気は高いようで、見学時期には競走馬のふるさと案内所に30、40代を中心に問い合わせが増す。ファンの間で注目の産駒と言えば、クラシックホース・テイエムオーシャンとの間に生まれたテイエムオペラドン(牡3歳)だろう。昨年11月の2歳未勝利戦では僅差3着に入っており、初勝利は近そうだ。父を追うにはエベレストを眺めるような道のりだが、勝ちに勝ったあの走りを思わせる2世の登場をファンは待っている。
「現役時代の成績を思えば、更に活躍できる産駒を出していけるはずです。馬は若いですし、大仕事を期待しています。」と、泉山場長は意気込みを語る。“オペラオー時代”の熱狂から10年の月日が流れた。どんな展開になっても、どんなに囲まれても、プレッシャーをかけられても、勝てる。そんなスーパーホースを出してくれないか、託す思いは新時代へと紡がれていく。誰もが認めるチャンピオンは雪と戯れながら、静かに力をみなぎらせていた。