キンシャサノキセキを訪ねて~社台スタリオンステーション
世界的な名ボクサーモハメド・アリが、コンゴ民主共和国の首都キンシャサにおいて、当時の統一世界ヘビー級王座に就いていたジョージ・フォアマンを頭脳的作戦を用いて王座に返り咲いた試合。「キンシャサの奇跡」とも言われるこの歴史的な名勝負からその名が付けられたキンシャサノキセキであるが、その現役生活は奇跡というより、順風満帆そのものだった。
2歳12月の新馬戦を勝ち上がると、続くジュニアCを勝利。3歳の暮れからは重賞競走の常連として、堅実なレースを続けていく。7歳の高松宮記念(G1)でG1初制覇を飾ると、翌年にも高松宮記念(G1)を優勝。芝1200mの条件となってからは初めてとなる連覇を果たした。
円熟味を増したレースからも今後の活躍が期待されたが、その矢先に引退を発表。種牡馬としての受け入れ先となった社台スタリオンステーションの徳武英介さんは、「こちらとしても突然のスタッドインだったので、正直、驚きました。それでも休んでいたフジキセキの穴を埋めるには充分すぎるほどの仕事をこなしてくれました」と話す。3月31日にスタッド入りしたにも関わらず、その後、154頭もの繁殖牝馬を集めて見せたのは、生産界の期待以外に他ならない。また、キンシャサノキセキ自身も環境の変化や生活の変化に戸惑うことなく、心身共に健康に種牡馬としての仕事を勤め上げ続けた。
「フジキセキの産駒は父と同様に前駆が発達している馬が多く見られるのですが、キンシャサノキセキは後駆も発達しており、全体的にバランスが取れた好馬体をしています。スプリントやマイルで好走していましたが、この馬体や母系の血統からしても、産駒は中距離までなら容易にこなしてくれそうです」(徳武さん)
同じ社台スタリオンステーションにはダノンシャンティもスタッドイン。今後は2頭でフジ「キセキ」の父系を発展させていくこととなる。