馬産地コラム

タイムパラドックスを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2011年12月26日
  • タイムパラドックス
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 2005年のNARグランプリ特別表彰馬。そして、2010年のNARファーストシーズンチャンピオンサイアーのタイムパラドックスを新冠町のビッグレッドファームに訪ねた。

 「この馬は冬場になると元気になるんです」と紹介してくれたのは同ファームの松尾邦宏さんだ。栗毛の馬体はうっすらと冬毛をまといつつあるが、体全体から活力のようなものをみなぎらせている。たしかに、どこかグッタリとしているように見える夏シーズンには考えられなかったオーラのようなものを発している。

 実際、現役時代も全16勝中13勝を10月から3月までの寒い時期に記録している。「だから、今でも思うのですが本当にダートだけを得意としていたのかなって」と松尾さん。「もちろんダートが得意ということは間違いないのでしょうが、もしかしたら体調がよくなる時期にダートの大きなレースが続いていたからかも、なんて思ったりもします。それくらい素軽いフットワークを見せてくれる馬なんですよ」という。

 そんな人間たちの会話を聞いていたわけではないだろうが、撮影のために手綱を解き放たれたタイムパラドックスは、放牧地の芝の上を気持ち良さそうに疾走した。そんな同馬を眺めながら「正直に言えば、よくわからないところがある馬なんです。ロベルトの血統はそんなところがあるのですが、普段はおとなしいのに突然スイッチが入ったりすることがあるんです」という。確かにレースで見せた爆発力には、そんな片鱗が見え隠れする。

 初年度産駒のセルサスは南関東の重賞ハイセイコー記念に優勝し、キタイセシャトルは福山王冠3着。2年目産駒ハクサンドリームも兵庫若駒賞で3着。全国13か所の競馬場を渡り歩いた父同様に産駒は全国に活躍の場を広げている。そして何よりも2010年NAR新種牡馬チャンピオンというタイトルは雄弁だ。「2歳よりも3歳。3歳よりも古馬になって良いということを考えると悪くない成績だと思います」と松尾さん。実際、55頭がデビューした初年度産駒は40頭が勝馬になっており、これらは今後、着実に力をつけてくれることだろう。

 現在のタイムパラドックスをひと言で言えば「実力はあるのだが、パフォーマンスが苦手なアスリート」のイメージだ。まだ13歳(※2012年は14歳)。6歳でG1初勝利。日本競馬史上、初めて8歳にして平地G1レースを勝ったその実力と成長力を見せつけるのはこれからだ。