馬産地コラム

グラスワールドを訪ねて~法理牧場

  • 2011年11月10日
  • グラスワールド~1
    グラスワールド~1
  • グラスワールド~2
    グラスワールド~2
  • グラスワールド~3
    グラスワールド~3
  • 2頭放牧でリラックスした日々を送っている
    2頭放牧でリラックスした日々を送っている

 2002年のダービー卿チャレンジトロフィー(G3)の勝ち馬グラスワールド(USA)を訪ねた。東日本大震災の影響を受けて、今年8月に福島県から北海道へ一時移住することになり、現在は日高町の法理牧場で過ごしている。

 放牧地へ会いに行くと、共に移動してきた被災馬と青草をたっぷり食べていた。法理牧場場長の法理俊典さんは、「福島からの長距離輸送も問題なく、こちらに到着後の体調はいたって良好ですね。大人しい馬で、食欲も旺盛です。」と、近況を伝える。当初は1頭で放牧していたそうだが、馬をリラックスさせるために2頭放牧に変更した。体つきは細くなく、馬体重は400kg台後半ぐらい。北海道の環境にも順応してきたという。

 法理牧場では9頭の被災馬を受け入れており、スタッフ5名が管理にあたっている。どの馬も健康状態に問題はなく、束の間の引っ越しは順調そのものだ。「日高町から被災馬入厩の打診があり、当初は受け入れにあたっての施設が不十分だったのですが、修繕をさせてもらって態勢が整いました。着地検査も済み、現在は競走馬のふるさと案内所を通じてファンの方の見学にも応じています。さっそくグラスワールドに会いにきた方もいました。期間の来年の5月末までしっかり面倒をみていきますよ。」と、法理さんは語る。

 グラスワールドは現役時代7勝をマーク。28戦目で重賞制覇を果たす“苦労人”だったが、長い下積みでメキメキと力を付けたことを生かし、6歳時に挑んだ安田記念(G1)ではアドマイヤコジーンの4着と好走した。当初はダートを使われていたが、準オープン昇級後に大敗を喫すと、陣営は芝に目を向けた。この選択が吉と出て、重賞制覇の道筋を作ることとなる。9番人気という低評価をあざ笑うかのように初芝の準オープン戦を快勝すると、返す刀でダービー卿チャレンジトロフィー(G3)を射止めた。その後は芝マイル戦線ではおなじみの顔となり、勝ち星こそ得られなかったものの、重賞で度々上位争いを演じた。

 引退後は福島県南相馬市で繋養され、同市の伝統行事「相馬野間追」へ出場した。原発から近い地域にいたことで、このほど避難することとなったが、来年夏には彼の大事な仕事が待っている。北海道での年越しを経て、また「相馬野間追」にこの馬の元気な姿があることを願ってやまない。