馬産地コラム

メジロマイヤーを訪ねて~法理牧場

  • 2011年11月09日
  • メジロマイヤー~1
    メジロマイヤー~1
  • メジロマイヤー~2
    メジロマイヤー~2
  • メジロマイヤー~3
    メジロマイヤー~3
  • 2頭で放牧されています
    2頭で放牧されています

 2002年のきさらぎ賞(G3)、2006年の小倉大賞典(G3)の勝ち馬、メジロマイヤー(メジロ牧場生産)を訪ねた。競走生活を引退後、福島県南相馬市で余生を過ごしていたが、今年3月の震災の影響で、夏から北海道日高町の法理牧場へ被災馬として避難している。

 福島県から移動して1か月以上が経ち、北海道の環境にも慣れてきた様子。放牧地でものびのびと過ごしている。「落ち着きがあるし、体調面はすこぶる良好です。こちらに来てから半月近くは、放牧地の青草を黙々と食べ続けていました。到着時と比べると馬体がふっくらしてきましたね。」と、近況を語ってくれたのは法理牧場場長の法理俊典さん。現在は日中放牧しており、寒さの増してくる晩秋に向け、気温変化を考慮しながら放牧時間を調節している。

 福島での余生の記録を調べると、やんちゃさが目立っていたというメジロマイヤー。法理牧場でもそのキャラクターはあまり変わらない。「さすが重賞勝ち馬とあって、威張るというか、気の強いところはありますね。初めの頃は相棒の馬の分まで飼い葉を食べようとしていましたよ。」と、法理さんは苦笑い。食欲は旺盛のようで、文字通り“馬肥ゆる秋”を謳歌している。

 メジロマイヤーの現役時代は32戦6勝。3歳時、3連勝できさらぎ賞(G3)を制してクラシックに名乗りをあげるも、続くG1では大敗を喫し、その後は2年間白星を掴めなかった。重賞馬であれ、一度不振に陥るとなかなか立ち直るのは難しい。“昔は強かったのに”と、ターフを去る馬はあまたいる。彼もまた低迷から脱せず、一時は準オープンに身を置いた時期もあったが、不屈の精神力と陣営の執念、父サクラバクシンオー、母の父サッカーボーイという成長力豊かな血筋も騒ぎ、5歳春に復活V。ツルマルボーイの制した安田記念(G1)では約2年ぶりのG1出走を果たし、自慢の逃げで見せ場を作った。

 その後、長期休養を経ることとなったが、競走馬としてベテランの域に達した7歳、再び栄光の瞬間は訪れた。若手・川田騎手とのコンビで迎えた小倉大賞典(G3)。11番人気という低評価を覆し、鮮やかな逃げ切り勝ちで重賞2勝目を決めた。これは当時のJRAにおける重賞最長間隔勝利記録となる、約4年もの歳月を経ての快挙だった。

 時は流れ、12歳の秋。今年は被災馬として北海道で年を越すことになった。入念な着地検査を受けた後は見学公開も開始し、競走馬のふるさと案内所経由で、すでに10組近いファンが訪れてきたという。法理さんは、「馬の特徴も把握できましたしね。受け入れ期間中はしっかり管理していきますので、福島の所有者の方、ファンの皆さんには安心して欲しいです。」と、力強い言葉を残してくれた。周囲の心配をよそに、メジロマイヤーの表情にどこか余裕を感じたのは、かつて長いトンネルを抜けて返り咲いた自信からだろうか。どんな道でも進んでみせる、という声が聞こえてくるようだった。