馬産地コラム

ブラックホークを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション

  • 2011年10月29日
  • ブラックホーク~1
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  • ブラックホーク~2
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  • ブラックホーク~3
    ブラックホーク~3

  ブラックホーク移動の報を聞いて、ブリーダーズスタリオンステーションを訪ねた。

 「やっぱり寂しいですよ。本当に愛嬌のある、かわいい馬でしたから」と開口一番、坂本教文主任が残念そうに言う。「数えてみたら5年間。最初の2年間は南半球へシャトルされていたので、実質4年間なんですが、もっと長い付き合いのような感じがします」と、同馬に対する思いを話してくれた。

 放牧地でのブラックホークは、現役時代に見せたような激しさを微塵も感じさせない馬だった。いつも頭を下げたままで、放牧時間のほとんどを草を噛むことに費やしていたような気がする。現役時代から500キロを超えていた馬体はさらに丸みを帯び、体全体のバランスから見れば、やや重そうな頭部。そういったことを含め、サンデーサイレンス系のような張り詰めた雰囲気とは対照的なムードを醸し出していた。

 だから、正直にいえば、取材対象としては良い思い出はあまりない。とにかく頭が上がらない。草を噛み、その場所に飽きたら、まるで草の香りを楽しむかのように地表からわずかな距離を保ったまま移動する。それでいて、結構な距離を移動するのだ。正確に測ったことはないが、おそらく放牧地での移動距離はほかの馬の平均距離よりも多いかもしれない。それでも頭が上がらない。撮影者泣かせの馬だった。

 そんなブラックホークが走っているのを1度だけ見たことがある。放牧時間が終わり、坂本主任が迎えに来て、声をかけたときだ。やや離れたところにいたブラックホークが足早に出入口のそばまで近寄ってきた。驚く取材者に「走るのも好きなんですよ」といたずらっぽく言われたことも、今では思い出のひとつだ。 

 まだ現役の種牡馬には失礼な言い回しだが、ブラックホークの産駒はよく走った。初年度産駒から道営ホッカイドウ競馬で菊花賞に相当する王冠賞勝馬アヤパンを出し、2年目産駒クーヴェルチュールはキーンランドC(Jpn3)を、3年目産駒チェレブリタは京都牝馬S(G3)に勝った。さすがスプリンターズS(G1)、そして安田記念(G1)の勝馬だ。半妹のピンクカメオはNHKマイルC(Jpn1)の優勝馬で、近親には2400mの世界レコードを樹立(当時)したホークスターがいる血統だ。

 「来シーズンは18歳ですが、馬は年齢を感じさせないくらいに若いです。種牡馬として迎え入れられるのは嬉しい限りです。扱い易い馬ですから、九州でもかわいがられると思います。元気で過ごして欲しい」と寂しさを紛らわすように話してくれた。