馬産地コラム

アドマイヤマックスを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2011年10月21日
  • アドマイヤマックス~1
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  • アドマイヤマックス~2
    アドマイヤマックス~2
  • アドマイヤマックス~3
    アドマイヤマックス~3
  • 寒暖の差に体調を崩すことなく、丈夫な馬です
    寒暖の差に体調を崩すことなく、丈夫な馬です

 2005年の高松宮記念(G1)の覇者、アドマイヤマックス(ノーザンファーム生産)を訪ねた。夏の新潟開催を締めくくる新潟2歳ステークス(G3)で産駒モンストールが鮮やかに先頭ゴールを切り、父へ産駒初重賞タイトルをプレゼント。昨今、種付け頭数はやや落ち込み気味であったが、来シーズンへ向けてV字回復の兆しがさしている。

 種牡馬アドマイヤマックスの住まいは新冠町のビッグレッドファーム。さっそく同牧場の蛯名聡マネージャーに近況を伺うと、「丈夫な馬で、健康そのものです。種付けも無難にこなしてくれています。この夏、産駒が待望の重賞勝ちを果たしてくれて、スタッフ一同たいへん喜んでおります。」と、笑顔を見せる。秋季は午前7時頃から夕方4時頃までを放牧時間に充て、来シーズンへ向けて英気を養っている。鳥のさえずりが響く静かな放牧地で、外国からやって来た種牡馬仲間のコンデュイットを隣りに見ながら、リラックスした日々を過ごしている。

 現役時代は重賞3勝を含む4勝をマーク。2歳秋のデビュー戦を白星発進すると、続く2戦目、東京スポーツ杯2歳S(G3)で早々と重賞奪取。故障のため3歳春を棒に振ったものの、復帰戦のセントライト記念(G2)で2着に入り、続く菊花賞(G1)では2番人気に支持されるも距離の壁に泣いた。その後は短距離~マイル路線に転じて本領発揮。G1でも好走を重ね、4歳秋の香港遠征では4着と見せ場を作った。その後もチャレンジを続けて迎えた6歳春の高松宮記念(G1)。メイショウボーラー、カルストンライトオといったトップクラスの快速馬相手に、天才・武豊騎手の巧みな手綱捌きと、強烈な決め手を駆使して念願のG1制覇を達成。高いスピード能力をたっぷり印象づけて、7歳から種牡馬入りとなった。

 産駒はこれまで3世代がデビューしている。自身がノーザンテーストの肌にサンデーサイレンスというトップサイアー同士の配合ゆえ、交配の選択肢に多少の限りはつくものの、初年度から4年連続で80頭前後の種付頭数をマークした。産駒について蛯名マネージャーは、「父譲りのスピードを生かし、短距離からマイルを得意とする馬が主ですね。全体的には芝向きの馬が多いですが、配合次第ではダート適性も引き出せる種牡馬だと思います。仕上がり早ですし、軽快なフットワークと前向きさ、運動神経の良さが産駒の長所です。」と、語る。

 母系からはラインクラフト、ソングオブウインドといったクラシック優勝馬や、ブロードマインド、マルカフリートといった古馬となってメキメキと頭角を現す馬も出ており、血統面とアドマイヤマックス自身の戦歴を考慮すると、産駒も2歳戦から長らく楽しみを抱かせてくれるだろう。

 「同期で共に走っていたデュランダルは今年オークス馬を出しましたし、こちらも負けていられませんね。まだまだ成績を高めていける馬だと思いますし、今後も重賞制覇を狙える馬が出現してくれることを信じています。」と、蛯名マネージャーは熱意を明かす。前述のモンストールをはじめ、好素材は他にもいる。JRA再転入後、破竹の4連勝でオープン入りを果たした素質馬アドマイヤコスモスや、全国で最も早く新馬勝ちを決め、ラベンダー賞でも上位に入った道営馬ウィナーズマックスがそうだ。2歳世代の産駒数は過去最多であり、これからデビューする馬の中から更なる新星登場も十分。あまたいるライバルの陰に名前が薄れつつあったが、改めてこの馬の底力を実感する場面は増えていくに違いない。その反撃は静かに始まろうとしている。