アドマイヤオーラを訪ねて~優駿スタリオンステーション
2010年の新潟記念(G3)を最後に現役生活を引退し、現在は新冠町の優駿スタリオンステーションで種牡馬生活1年目を送っているアドマイヤオーラを訪ねた。
父アグネスタキオン、母ビワハイジ。半兄にはディープインパクトを苦しめたアドマイヤジャパンがいて、半妹には年度代表馬にもなったブエナビスタがいる血統。研ぎ澄まされた名刀の切れ味を武器に、デビュー戦から33秒台の末脚を繰り出して見るものの度肝を抜いた。2戦目は同じ父から生まれたダイワスカーレットを楽に行かせすぎて半馬身及ばなかったが、シンザン記念(Jpn3)では好スタートから積極的な戦法で同馬を翻弄するかのように力でねじ伏せた。そして、当たり前のように弥生賞に勝った。
前年暮れにディープインパクトが引退し、明けた3歳世代はサンデーサイレンスの直仔がいない最初の世代。そんな時代にアドマイヤオーラは強烈な個性を放ちながらクラシック戦線の中心馬として次代を担うはずだった。しかし、常に33秒台の末脚を繰り出す強烈なエンジンは、まだ若く完成途上のサラブレッドには大きな負担となった。減り続けた馬体重がそれを物語っている。万全な体調とは言いがたい中、皐月賞(Jpn1)4着、ダービー(Jpn1)3着と世代トップクラスの能力を証明したが、その代償は左後脚の骨折というものだった。
「もの凄く品のある馬ですね。さすが血統馬だという感じがします」と本馬の第一印象を語ってくれたのは優駿スタリオンステーションの山崎努主任だ。2010年夏、引退が決まるとすぐに同スタリオンに移動して、鋭気を養っている。
「サンデーサイレンス系独特の皮膚の良さがあります。そして、動作のひとつひとつが俊敏で、そして力強い。いろいろな馬を見てきましたけど、これほどまでに動きが軽い馬というのはあまり記憶にありません」と本馬を称えている。さらに言うならば「種牡馬としても初年度とは思えないほどに種付けが上手で、前向き。これなら多頭数にも対応できそうです」と、ここでも天才ぶりを発揮している。
無駄がないのは動きだけではない。体全体もシャープで、放牧地でも緊張感張り詰めた雰囲気を醸しだしている。引き締まった表情が気の強さをうかがわせ、踏み出す一歩々々がとても機敏だ。そんなアドマイヤオーラも晩年は、あふれる才能ゆえに苦しめられた。日本代表として出走したドバイデューティフリー(G1)から帰国後は、柔らかい馬場に切れ味を殺され、その後は慢性的な脚部不安に悩まされた。惜しむらくは、もっとも輝いていたときのスタッドインではないということだが、それでも、この馬が生来持っている天賦の才を否定できるものではない。
種牡馬としても強烈な印象を与えてくれるに違いない。