オレハマッテルゼを訪ねて~イーストスタッド
第36回高松宮記念(G1)を制したオレハマッテルゼを、浦河町のイーストスタッドに訪ねた。
オレハマッテルゼは不世出の名種牡馬サンデーサイレンスの9世代目産駒。同期にはネオユニヴァースやゼンノロブロイ、3冠牝馬のスティルインラブがいる世代だ。同期生たちが華々しくクラシック戦線をにぎわせているのを尻目にじっと我慢の日々。デビューはダービー1週前の5月25日、中京競馬だった。満を持して、のはずだったがその初戦は出遅れて良いところなく敗れている。文字通りにどん底からの出発となったが、そこからゆっくりとだが確実に力をつけて世代トップタイのJRA9勝を記録している。
「やっぱりね、期待しちゃいますよ」と同スタッドの青木大典場長が産駒のデビューを待ちきれないというような表情で本馬を案内してくれた。種牡馬デビューから4回目の春を迎え、早ければこの夏にも産駒がデビューする。「産駒を何頭か見ましたけど、軽くて、柔らかくて、いかにもスピードがありそうな馬のつくりだと思いましたね」と声を弾ませた。ダイナカール、エアグルーヴ、アドマイヤグルーヴ。そして本馬の全姉エガオヲミセテ。牝馬上位のファミリーで、唯一のG1タイトルを持つ牡馬というのが最大のセールスポイントだ。
「血統というか、競走実績というか、普通にそのままを産駒に伝えてくれたら楽しみが広がります」という。重心が低く、ボリューム感あふれる筋肉質な馬体は祖母の父ノーザンテーストが垣間見える。そして気の強そうな顔と闘争心あふれる表情にはサンデーサイレンスの面影がある。「気の強いところもあるんですが、それもまた血統だと思えば、心強い限りです」と青木場長もたのもしそうに目を細めている。
あの日、重賞未勝利ながらも4番人気で出走した高松宮記念(G1)は先行グループのインコースで流れに乗って、そしてスムーズなコーナーリングから直線は鋭く伸びた。インコースで粘ろうとするシーイズトウショウを置き去りにして、外から追いすがるラインクラフトの追撃を抑えた。牡馬の貫禄を示し、そして父には59個目のG1タイトルをプレゼントした。「放牧地でもおとなしいタイプではないですが、扱いにくいということもないですね。でも、種付けの時などはサンデーサイレンス系らしさを見せてくれますよ」といたずらっぽく笑った。
尾花栗毛の派手な容貌と、ちょっと変わった名前。初年度産駒の中には父の名をもじった楽しい名前を予定している馬もいるという。そんなことも話題になりそうだ。
そんなオレハマッテルゼは、夏の見学シーズンともなれば、訪れるファンも多いという。「ファンにも、生産者にも人気は上々です。そういう人たちの期待に応えて欲しいし、応えてくれる馬だと信じています」という。待望の初年度産駒デビューは、もう目の前だ。