馬産地コラム

バランスオブゲームを訪ねて~アロースタッド

  • 2011年03月18日
  • バランスオブゲーム~1
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    バランスオブゲーム~3

 新ひだか町のアロースタッドで種牡馬生活5年目を迎えているバランスオブゲームを訪ねた。

 2歳夏にデビューし、7歳秋のオールカマーまで。5年間にも及ぶ競走生活で重賞7勝。G1タイトルには恵まれなかったが、先行力とスピードを武器に、G2レースは歴代最多となる6勝。6億円を超える賞金を稼ぎ出した。

 「よくぞ、この名前をつけてくれた」と生産者が語ったほど、生まれたときからバランスの良い馬だったという。綺麗な馬で、だからこそ名血がキラ星のごとくのセレクトセールへの上場を決め、そして購買者の目にとまった。

 その後の活躍は前述のとおりだ。多くのタイトルとともに馬産地へと帰ってきた。

 「普段はおとなしいし、扱い易い馬ですよ。元気が良いのは種付けのときくらいかな」とアロースタッドの本間一幸主任が言う。放牧地でものんびり過ごすことが多く、周りの馬が走り回ってもあまり意に介さないらしい。「賢い馬で、慎重なところがありますね」というのは担当する佐藤尚之さんだ。

 「産駒も何頭か見ましたけど、綺麗な馬が多いですね。欲をいえばキリがないけど、もう少し産駒がいると心強いです。でも、その少ない産駒が市場で高く評価されたこともあるし、先々は走ってくれると信じています」と愛馬をいたわる。昨年デビューした初年度産駒は19頭。その中には2008年のセレクションセールにおいて1120万円で取引された馬もいて、現在の代表産駒は南関東で5戦2勝、5着以下なしと堅実な成績を残しているリアライズブラボーだ。

 「この馬自身が高齢まで活躍したタフな馬だったし、フサイチコンコルド自身も3歳春は体質が弱くて思うように使えなかった。バランスオブゲーム自身は2歳でレコード勝ちしていますけど、産駒はやや晩成型なのかもしれない。こんなものではないはず」と自らも毎年のようにバランスオブゲームのもとへ繁殖牝馬を送っている生産者も期待する。そんな愛情に包まれた産駒は、父譲りのスピードを持っている馬が多く、堅実な競走キャリアを積み上げている。

 29戦の競走キャリアの中で、G1挑戦は半数近い14度。最高の舞台では2度の3着が最高だったが、この馬は、この馬の舞台では誰にも負けないくらいに輝いていた。そんな彼をバイプレイヤーとは呼びたくない。きっと近い将来、この馬が、この馬の産駒が主役となる話を届けたいと思う。