タマモストロングを訪ねて~JBBA静内種馬場研修所
4歳春の遅いデビューながらメキメキと力をつけ、破竹の7連勝でマーチステークス(G3)を優勝。その後も全国各地でダート重賞をもぎ取ったタマモストロングを訪ねた。現在は北海道新ひだか町静内で、日本軽種馬協会・生産育成技術者研修生の研修用乗馬として活躍している。
研修用乗馬の管理をしている日本軽種馬協会静内種馬場・研修課の藤田真弘さんに近況を伺ってみると、「健康状態は良好です。長きにこちらで研修生を乗せて頑張っています。現在、馬体重は532kgありますね。カイ食いも良く、丈夫な馬です。」と、語ってくれた。未来のホースマンたちと共に、朝8時30分から騎乗訓練で一緒に汗を流す。呼び名は“タマ”。16歳となった今も、走路ではハロン20秒ほどのペースで駆け抜け、障害飛越も巧みにこなしている。
タマモストロングの血統表を眺めてみると、オールドファンの思い出話に花が咲く。母はエリザベス女王杯(G1)であっと言わせたサンドピアリス。母の父は一世を風靡したハイセイコーの名が刻まれる。力の要るダートでバリバリ活躍した要因は、父スキャンの長所が引き出されたのだろう。戦績をひも解くと、ノボトゥルー、ゴールドティアラ、スマートボーイらを下して重賞4勝し、フェブラリーS(G1)では勝ち馬から0.6秒差の競馬で、上位争いを演じた。おじさんとなった姿は温厚そうに見えるが、素顔は果たしてどうなのだろう。
藤田さんによれば、「穏やかで大人しく、物おじしない性格です。人間に対して悪さをすることはありませんが、馬同士では強いですね。」という回答だ。こちらにはサラブレッド、アラブ、ハーフリンガーなど23頭が在厩しているが、トップクラスのダート馬と互角の勝負をしてきた貫禄のなせるわざか、放牧地ではボス的存在に近いという。
ここで研修を積んでいる岐阜県出身の勝股代次さんはタマモストロングの担当をしている。現役当時のタマモストロングのレースをテレビで見た記憶があるというから、若いながらも競馬との付き合いは長い。普段の様子やその背中を知る彼にも“タマ”の特徴を聞いてみた。「またがってみると、ズブいところがあるので、しっかり指示をしないと動いてくれません。やる気になると機敏に反応してくれます。オンとオフがはっきりしていますね。乗り味は柔らかくて、重賞馬らしく特別なものを感じます。」と、丁寧に説明してくれた。
馬に伝わるように的確な合図を出さないと動かないタイプとあって、最初は苦戦する研修生も少なくないという。未熟な研修生だとタマモストロングはそれを察知して、簡単には反応しない。研修生にとっては腕を試される一頭だ。これからも幾多の若者がタマモストロングに学び、巣立っていくことだろう。
昨春門を叩いた研修生は卒業まであとわずかとなり、この春からはまた新しい研修生がやってくる。タマモストロングも一期一会の空気を感じているかもしれない。研修課の藤田さんは、「この先も健康でいて欲しいです。また一年一年、走路騎乗、障害飛越といった場面で、数多くの研修生を迎え入れて欲しいと思います。」と、願っている。
たくましく成長していく若者たちから刺激を受けながら、歳を重ねてもエネルギッシュな毎日を送っていくことだろう。