サンライズバッカスを訪ねて~ヤナガワ牧場
生まれ故郷、ヤナガワ牧場へ功労馬として帰って来たサンライズバッカスを訪ねた。
02年産の9歳馬と言われれば、ディープインパクトが真っ先に挙げられる世代。サンライズバッカスが駆け抜けたダート路線にもカネヒキリ、ヴァーミリアンという同級生が“2強”とされていた。
そんな彼が最も輝きを放ったのは、2強が相次いで回避し、世代の代表として3番人気で挑んだ07年のフェブラリーS(G1)だった。
「生まれた時から見映えのするいい馬でした。順調に成長してくれれば重賞に挑戦できるくらいの器になるかなと期待していたんですよ」と梁川正克社長は当時を振り返る。
重賞に出れれば…当歳時に描いた梁川社長の謙虚な願いは時を経るごとに大きく膨らんで行く。未勝利を脱出するまでに5戦を要したものの、ダートに変わってからは4連勝で念願の重賞出走に手が届いた。初挑戦のダービーGP(G1)はカネヒキリの2着に惜敗したが、次に選んだ武蔵野S(G3)ではカネヒキリの猛追を凌ぎきり重賞初勝利を飾った。
「種牡馬にはなれなかったけど、牧場にとって初G1制覇をもたらしてくれた大切な馬です。」と梁川社長。
現在は主に1歳馬や空胎馬が繋養されている分場に住まいを構えるサンライズバッカス。分場長の岩倉千年(ちとせ)さんはヤナガワ牧場の創業時から勤めるベテランスタッフだ。
「寒い時期に帰って来たから馬服を着せても放牧地でガタガタ震えちゃってね。今は冬毛も生えて環境にも馴染んで来ました。隣の放牧地に牝馬がいるんだけど、ただ黙ってジッと見てるだけでそんなに騒いだりしないし、思ったほど悪さもしませんよ」と岩倉さんは笑う。
オーナーにとっても牧場にとっても初のG1制覇という勲章をプレゼントしてくれた愛馬のために、最高の環境を模索している最中のようだ。