馬産地コラム

ワイルドワンダーを訪ねて~静内フジカワ牧場

  • 2011年03月02日
  • ワイルドワンダー~1
    ワイルドワンダー~1
  • ワイルドワンダー~2
    ワイルドワンダー~2
  • ワイルドワンダー~3
    ワイルドワンダー~3
  • 今後はアロースタッドに移って種付けを行う
    今後はアロースタッドに移って種付けを行う

 2011年の新種牡馬の一頭、ワイルドワンダー(静内フジカワ牧場生産)を訪ねた。昨年5月より生まれ故郷に帰り、今春から種牡馬として再スタートを切る。

 放牧地へ会いに行くと、故郷の懐かしい風を受けながら元気いっぱい。うなっていた。同牧場の藤川靖仁さんは、「元気ですね。まだこの馬自身は引退したとは思っていなくて、休養に来た気分でいるんじゃないかな。」と、話す。写真を撮る時もはしゃぐように迎えてくれた。現役当時の首をグッと下げたフォームで、今にも全力疾走できそうな雰囲気だ。

 ワイルドワンダーは6勝をマークした活躍馬ワルツダンサーの初仔として、静内フジカワ牧場で誕生した。初仔だけに2歳夏のデビュー時は410kgの小柄な馬体だったが、ダートで勝ち星を重ね、3歳暮れにオープン入りすると、ダート重賞に挑戦。着実に力をつけ、5歳時にアンタレスS(G3)、プロキオンS(G3)、6歳時には根岸S(G3)を優勝した。その頃には馬体重も460kg前後まで増え、漆黒の馬体から繰り出す末脚はファンの心を掴んだ。藤川さんもよく競馬場まで応援に出かけたという。

 「一番印象に残っているレースは2007年ジャパンカップダート(G1)ですね。このレースは国際G1で、やっぱり他のG1とは違う、特別な雰囲気を感じました。2100mの距離がどうかと思いましたが、府中は合うのでチャンスがあると思っていました。結果、5着に敗れましたが、2100m戦で強豪馬相手でも見せ場を作ってくれて、重賞を勝った時と同じぐらい嬉しかった。この馬の根性に感動しました。」と、当時の思い出を話してくれた。馬房にはG1出走を祝って制作してくれた横断幕や、優勝写真パネルが大切に掲げられている。

 引退後はオーナー、調教師の希望で種牡馬登録することとなった。試験種付けを無事クリアし、種付けは新ひだか町静内のアロースタッドに移って行う。静内フジカワ牧場でも2頭の交配を予定している。藤川さん曰く、母ワルツダンサーと同じく利口で、頭が良い馬というから、父としてもきっちり仕事をこなしてくれるだろう。

 ワイルドンワンダーの半弟オペラブラーボ(父オペラハウス)は芝で6勝を挙げ、ワイルドワンダー自身も芝で33秒台の上がりで準OP4着の実績がある。芝適性のある産駒もイメージするに難くない。藤川さんは、「あまり大きいタイプの馬ではありませんが、名種牡馬の父ブライアンズタイムに似ているところもあるし、どんな産駒が生まれるか楽しみです。」と、笑顔を見せる。自家生産馬による夢の配合に期待感は高まっていく。

 種付けシーズン終了後は静内フジカワ牧場へ戻り、ファンの見学も受け入れる予定とのこと。ファンの方には父となった姿を是非ご覧いただきたい。