新ひだか町のレックススタッドへエイシンサンディ(栄進牧場生産)を訪ねた。3歳という若さで種牡馬入りした良血馬は、この地で16年目の春を迎える。今ではニューカマーを眺めるベテランとして悠々と構える立場だ。

　同スタッドの泉山義春場長に近況を伺うと、「体調に関しては絶好調と言えますね。競馬を使ってなかった馬だし、年齢以上に若く、衰えを感じさせません。種付けは上手いし、吹っ飛んでいくぐらい、元気が有り余っています。受胎率も上々です。」と、若馬を語るような口ぶり。白銀の放牧地に会いに行くと、気の向くままに草を食んだり、突然走り出してみたり、マイペースに過ごす様子が見て取れた。父と似た額の流星はよりくっきりと冬の日差しを浴びていた。

　父サンデーサイレンス、母の父ノーザリーは共に気の強さで知られた馬で、エイシンサンディもやはりその血筋を現す。気性面について泉山場長は、「ちょっと気ままなところはありますね。自分の思うようにならないと機嫌を悪くします。」と、語る。種牡馬入り当初は外でしか種付けをしようとせず、雨天でもずぶ濡れになりながら種付けをする一幕もあったそうだ。

　産駒の傾向は芝ダート問わず、距離実績は偏りがない。2歳から頭角を現す馬もいれば、古馬となってメキメキと力をつける馬もおり、かけ合わせ次第で多種多様な遺伝子が宿る。

　種付け料が無料だった頃に交配されたミツアキサイレンスは名古屋グランプリ(G2)、佐賀記念(G3)など交流重賞を制し、3億円以上を稼ぎ出した。エイシンテンダーは3連勝でチューリップ賞(G3)を制し、優駿牝馬オークス(G1)では見せ場たっぷりの4着に健闘した。未出走、無料でスタートした種牡馬の道は、産駒の快走とコストパフォーマンスの高さが評価され、100頭を優に超える繁殖牝馬を集める売れっ子種牡馬へと辿った。今なお種牡馬としての看板は色あせない。

　昨年は産駒セイクリムズンがカペラS(G3)を優勝し、ダート短距離路線で頂点を狙う位置につけている。頼もしい有力馬の登場に泉山場長も期待を膨らませる。「セイクリムズンは強い競馬を見せていますね。今年の活躍が楽しみな産駒です。何とか20歳になる前にG1馬を出したいですね。」と、力強く語る。種牡馬一筋で生きてきたプライドがG1のタイトルをたぐり寄せるはずだ。