ダイタクバートラムを訪ねて~日高スタリオンステーション
戸惑う様子をまったく見せずに、ダイタクバートラムが日高スタリオンステーションの甲斐雄介さんに引かれて馬運車に乗り込んだ。行き先は、十勝軽種馬農協種馬所だ。2011年からはダイタクバートラムの父ダンスインザダークのライバルだったイシノサンデーとともに2世づくりに励むことになる。
2006年に同馬がスタッドインしてからずっと担当してきた甲斐さんにとっては、5年という時間を供にしてきた、いわば同胞だ。寂しさがないわけではないだろうが、それを表情に出さずに手綱を譲り渡した。
昨年はタレントの新庄剛志さんが所有するタノシンジョイが南関東のJRA認定競走を勝って話題にもなったが、期待するような活躍馬には恵まれていない。「半兄のダイタクリーヴァがJRAの重賞勝馬を出したように可能性はあると思うので、ちょっともったいない感じもしますが、2010年は1頭の種付けでした。仕方ないのかな」と日高スタリオンステーションの三好正義場長も寂しそうだ。
放牧地では他の馬に対してライバル心をむき出しにして走りまわることもあるというが「人間に対しては穏やかな馬なので、どこへ行ってもかわいがられると思います」という。そういえば、放牧地で、洗い場で、担当者に甘えるような仕草を何度も見ている。2010年の馬産地見学ツアーの際も、予定外の展示となったが動じることなく、リクエストに応えていた。
1800mの北九州記念(G3)のレコード勝ちもあるが、阪神大賞典(G2)、ステイヤーズS(G2)勝ち示すように、父ダンスインザダークゆずりの豊富なスタミナと、長く伸びる末脚が武器だ。そんなレースぶりが人気となったダイタクバートラム目当ての見学者も少なくないという。「そんなときに限って愛想がわるいとこがあるんですよ」とちょっと困った顔になった。
「今シーズンを通して体調は良かったですよ。食欲がありすぎて、少しダイエットが必要かも。けい養地が変わって、来年は忙しいシーズンになると良いですね」と笑顔で送り出した。