馬産地コラム

ユウセンショウを訪ねて~タイヘイ牧場

  • 2011年02月18日
  • ユウセンショウ~1
    ユウセンショウ~1
  • ユウセンショウ~2
    ユウセンショウ~2
  • ユウセンショウ~3
    ユウセンショウ~3

 96、97年のダイヤモンドS(G3)を連覇するなど、中~長距離重賞には欠かせない存在だった個性派、ユウセンショウを訪ねた。

 19歳とは思えぬ程若々しい面差しで迎えてくれたユウセンショウ。その少年っぽい瞳は、現役時代より若返ったようにも思える。種牡馬としては1頭の産駒を送り出すに留まったが、生まれ故郷でのんびりと過ごしている。

 「昔からおとなしく、賢い馬でしたから特に手がかかった思い出はありませんね。周りには繁殖牝馬しかいませんし、去勢もしていないので発情のシーズンになったら鳴いたりするもんなんですけど、この馬は特別騒いだりすることもなく、マイペースに暮らしてますよ」と荻野芳守場長。

 母ユウミロクはオークス(G1)2着、カブトヤマ記念(G3)優勝という競走成績も然ることながら、母としてもユウセンショウを筆頭に、中山グランドジャンプ(JG1)を連覇したゴーカイ、中山大障害(JG1)を制したユウフヨウホウを送り出すなど優秀な繁殖成績を残した。そのユウミロクに、現役時代同厩舎で活躍していたラグビーボールを配合して生まれたユウセンショウは、まさに「夢の配合」だった。

 放牧地で投げ草を食んでいたユウセンショウが荻野場長の姿を見つけると、降り積もった深い雪をかき分けながら一目散に駆け寄り、後ろを付いて歩く。その姿は1人と1頭の絆の深さを物語っていた。「もうずっと一緒にいるからいくつになったか忘れちゃった(笑)そうか、19歳か。牧場にとっては大事な血統。長生きして欲しいね」と微笑む荻野場長。

 牡馬が、功労馬として故郷に帰れるケースはほんの一握りというのが馬産地の現状。そんな中、ユウセンショウは幸せな余生を過ごしている1頭と言えよう。