馬産地コラム

バランスオブゲームを訪ねて~アロースタッド

  • 2011年01月11日
  • バランスオブゲーム~1
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  • バランスオブゲーム~2
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  • バランスオブゲーム
    バランスオブゲーム

 「バランスオブゲームもここにおるんやぁ。同じような現役生活やったから頑張ってほしいなぁ」と、新ひだか町のアロースタッドまでスーパーホーネットを送り届けた矢作芳人厩舎の久保公二助手が放牧地をまわりながらエールを送った。G2レース4勝でG1レース2着4回のスーパーホーネットとG2レース6勝でG1レース未勝利のバランスオブゲーム。ともに同じスタリオンからG1制覇の夢は産駒に託すことになった。

 と、そんなとき、何に驚いたのか、隣の放牧地にいるスズカマンボが突然走り出した。現役生活にピリオドを打つキッカケになった後脚の怪我はまだおもかげを残すものの日常生活には支障がないほどに回復したようだ。

 感化されたように2歳年上のバランスオブゲームも走り出した。重心の低い走りは現役時代を彷彿させるもの。ちょっとばかり幅広で、惚けたような顔が愛嬌を醸し出している。

 「普段はおとなしい馬なんですけどね」と本間一幸主任が困ったなぁというような顔で馬をかばった。夏に行なわれた馬産地ツアーで、現役種牡馬としては異例ともいえる参加者個々とのツーショット撮影をこなしたほどだから、主任の言葉に嘘はないのだろう。ただ、サッカーボーイやステイゴールドを擁するロイヤルサッシュ系。しかも、父がフサイチコンコルドやアレミロードが入る血統を考えると、目の前で走り回っているバランスオブゲームの方がイメージと符合する。

 「引退して4年がたちますが、今でもファンの多い馬ですね。今年も夏の見学シーズンにはこの馬を目当てにたくさんの方が来場してくれました」と主任。重賞7勝2着3回。G1レースには届かなかったが丸5年の間、JRAの重賞戦線をにぎわせた。そのインパクトは強烈だ。サービス精神の旺盛な馬らしく、放牧地をいつも歩きまわっており、カメラを向けるとポーズをとった。

 「賢い馬なんですよ。無駄にうるさいのではなく、自分に求められているものを理解している馬です」と主任は言う。待望の初年度産駒。現在のところ思うような結果は出ていないが「市場なんかでも高く評価される馬がいて、きっかけさえつかめれば、とも思います。長い目で見てください」とメッセージを預かった。