馬産地コラム

ファインモーションを訪ねて~伏木田牧場

  • 2010年12月28日
  • ファインモーション~1
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  • ファインモーション~2
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  • ファインモーション~3
    ファインモーション~3
  • ファインモーション~4
    ファインモーション~4

 「北海道馬産地見学ガイドツアー」では2年連続でツアー行程に組み込まれた人気馬だ。見学時間内には、個別の記念写真を撮らせてもらったり、またニンジンを与える機会を設けてもらうなどの牧場の厚意は、思い出をより深いものにしてくれている。

 「若いうちならこんなことは出来なかったけど、もう大人だから」と場主の伏木田達之さんがファインモーションに優しい目を向けている。「うちにとっては大切な功労馬。いつまでも長生きをして欲しい」という言葉が暖かかった。

 外国産馬ということに加えて体質が弱かったファインモーションは、3歳春のクラシックには無縁だったが、その強さはキャリアを積むごとに光を増していった。秋華賞(G1)を不敗のまま制すると、エリザベス女王杯(G1)はグレード制制定以降初となる3歳馬による古馬混合G1制覇を成し遂げた。秋華賞の単勝オッズが1.1倍で、エリザベス女王杯のそれは1.2倍。いずれのレースも史上最高の単勝支持率の中で記録した圧勝劇だった。

 晩年は心身のバランスを崩してレースぶりが安定しなかったが、それでも随所に光るものを見せながら、5歳秋のマイルチャンピオンシップ(G1)を最後に引退した。

 あれから6度目の秋を迎えている。ファインモーションは、浦河町にある伏木田牧場の放牧地で静かに暮らしている。「もう、種付けはしてないんです。医学的に(受胎は)無理だと言われました」と伏木田さんは、表情を変えずにファンに状況を報告していた。残念ではあるが、それが現実だ。「虎は死んで皮を残し、人は死んで名を残す」というが、ファインモーションは思い出を残してくれている。

 現役を引退したばかりのときは、広い放牧地をところせましと走り回っていたファインモーションも、11歳。今では、2頭の仲間と一緒にのんびりと過ごしている。3頭それぞれの役割があるようで、ファインモーションは一番威張っているようにも見えるし、他の2頭に守られているようにも見える。微妙な位置関係だ。

 「賢い馬ですから、自分の役割を理解しているようです。うちの生産馬ではありませんが、大切な功労馬です。これからも繁殖牝馬と同じような生活を送らせてあげたい」という言葉は優しかった。