マヤノトップガンを訪ねて~優駿スタリオンステーション
“復活”か“雪辱”か“世代交代”か。6年ぶりのクリスマスイブ開催となった第40回有馬記念は、レース前からどことなく波乱を含んでいた。
たった1年前、無敵を誇ったナリタブライアンと、そのナリタブライアンに食い下がったヒシアマゾン。1年という時間を経て、人気は秋2戦でよいところがなかったナリタブライアンではなく、ジャパンカップでドイツのランドに食い下がったヒシアマゾンが上位になっていた。しかし、この類い稀なる女傑も牡馬相手のG1レースは2着2回。それでも、この2頭が3番人気のジェニュイン以下を引き離して一騎打ちムードを漂わせていた。
僅か12頭。されど12頭。天皇賞(秋)(G1)で豪快な追い込みを見せたサクラチトセオーや安田記念(G1)、宝塚記念(G1)で好走してきたタイキブリザードも含め、それぞれが期待と不安を抱えてのエントリーとなっていた。
レースを引っ張ったのはマヤノトップガンだった。前半1000mが62秒2というスローペース。大逃げではなく、引きつけての逃げ。1~2コーナーでたっぷりと息を入れたマヤノトップガンは、向こう正面に入るとややペースをあげながら内1頭分を空けて好位を進むタイキブリザードを牽制する。これではスローペースだとわかっていても突っつくこともできない。後方では出遅れたヒシアマゾンがもがいていた。
歓声が沸いたのは3~4コーナーの中間地点だ。ナリタブライアンがグングンポジションをあげて前を伺う。それを追うヒシアマゾン。はかったように12秒2で進んでいたペースが3角をまわる頃には12秒0にあがり、4角をまわるときには11秒2とペースアップ。直線坂下ではナリタブライアンがタイキブリザードを交わして一度は2番手にあがるが、そこで力尽きた。16万4881人の大歓声に迎えられて先頭でゴールに飛び込んだのはマヤノトップガンだった。
あれから15度目の冬がやってきた。18歳になったマヤノトップガンは、相変わらず美しく、派手な馬体で優駿スタリオンステーションの放牧地を闊歩していた。「種付けにくる人はみんな『変わらないね』と言ってくれるのですが、顔なんかには年齢を感じさせるようになりましたよ」と山崎主任。いまはスタリオン全体の管理者として担当から外れているが、若きマヤノトップガンと苦楽をともにしてきた。「マーベラスサンデーやキングヘイローに先を越されちゃいましたね」と苦笑い。
2010年シーズンからマーベラスサンデー産駒のシルクフェイマスが優駿スタリオンステーションでスタッドインを果たし、2011年シーズンからはキングヘイロー産駒のローレルゲレイロを迎え入れることをちょっと気にしている。マヤノトップガンの産駒といえば、チャクラが別の場所で種牡馬となっているのみだ。
同馬の産駒は、芝でダートで長距離で短距離で。現役時代同様に変幻自在のオールマイティさを発揮しているが、それが逆にイメージを希薄なものにしている。「大物を出してくれると信じています。まだ下級条件ですけど、マヤノトップガンの産駒らしい“候補”がいるので楽しみにしているんです」と最高の笑顔を見せてくれた。