馬産地コラム

バゴを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2010年12月16日
  • バゴ~1
    バゴ~1
  • バゴ~2
    バゴ~2
  • バゴ~3
    バゴ~3

 ヴィクトワールピサ、エイシンフラッシュ、そしてローズキングダム。この他にもアリゼオが毎日王冠(G2)を勝ち、コスモヘレノスがステイヤーズS(G2)を快勝。鳴尾記念(G3)では3歳馬が1~3着までを独占したように、2007年生まれ世代は強力だ。その中で“もっとも強い馬が勝つ”といわれている菊花賞(G1)を制したのがバゴの初年度産駒ビッグウィークだった。ほか、3歳牝馬のオウケンサクラが天皇賞(秋)(G1)で4着に入るなど、ここ一番で産駒がみせる底力は素晴らしい。さすがは欧州最高峰レース、凱旋門賞(G1)の勝馬だ。

 「初年度産駒からG1レース、それもクラシック勝馬を出してくれて本当に嬉しいです。ビッグウィークの菊花賞(G1)は、人気こそなかったですけどチャンスはあると思っていました」と手放しで喜んでいたのは日本軽種馬協会静内種馬場の中西信吾場長だ。

 バゴの産駒は、そのほかにもオウケンサクラがフラワーC(G3)に勝って、桜花賞(G1)2着、またエスカーダがオープン特別に勝っている。南関東ではショウリュウがハイセイコー記念を制するなど、これ以上ない好スタートをきった。

 これら産駒の活躍で、来年は忙しい春になりそうだ。

 そんなバゴだが、担当者を困らせる一面もあるというから面白い。「夏は良いんですけど、冬は馬服を着せて放牧します。そうすると勝手に脱いじゃっていることがあるんですよ」と同種馬場の有里正人厩舎長が不思議そうな顔をする。ご存じない方もいるとは思うが、馬服というのは3か所でしっかり紐止めするので、人間の手を借りなければ、容易に脱げるものではない。よほど器用に口を使い、体が柔らかくなければ出来ない芸当だ。見れば、バゴの馬服はボロボロになっている。

 放牧地では、取材者の姿を見つけると、芝の感触を楽しむかのように軽快な歩様を見せてくれた。相変わらずの好馬体。薄い皮膚に包まれた筋肉が躍動する。そういえば、胆振種馬場にいた頃も、そうだった。人懐っこい馬だ。人懐っこすぎて甘えてくるというから見学の際はご注意いただきたい。

 いたずら好きで、馬房の中でも何かをしていないと気が済まない面があるらしい。考えてみれば、まだ9歳。同じ年に生まれ、未だに現役生活を送っている馬も少なからずいるのだから、仕方のないことかもしれない。今は、束の間の休息時期。来年以降、またバゴの産駒が競馬場をにぎわせてくれることを楽しみにしたい。