ビッグサンデーを訪ねて~日高スタリオンステーション
“If You are going to die,in Front”
直訳すれば「もし、お前が死ななければならないなら、先頭に立って死ね」とでもなるのだろうか。ビッグサンデーのレースを振り返っていたら、そんな言葉を思い出した。ある逃げ馬を管理したアメリカの調教師のコメントだというが、かつてはこのフレーズを多様して競走馬を鼓舞し続けたコラムニストもいた。
頑ななまでの徹底先行、それがビッグサンデーだった。
逃げ差し自在の脚質で活躍した母キタノオゴジョから豊かなスピードを受け継ぎ、そのレースぶりはセンスにあふれるものだった。3歳春のスプリングS(G2)では早めの競馬からメジロブライトの追い込みを退けて重賞初V。
4歳シーズンは逃げ戦法に活路を見出し、2重賞含む3連勝を記録。秋にはマイルチャンピオンシップ(G1)でタイキシャトルの2着して力のあるところをみせた。4歳春のマイラーズC(G2)優勝から7歳春で引退するまで。その間には長いトンネルもあったが、負け続けているときも自分のスタイルを崩そうとはしなかった。その潔さが“らしさ”でもあった。
「来年は11年目のシーズンになります。近年は種付頭数に恵まれていませんが、もうひと華咲かせて欲しいですね」とは事務局の荻伏ブリーディングシステム。供用初年度、2年目で併せて100頭以上の繁殖牝馬に配合し、その中からJRAの準オープン馬ビッグアラミスや地方重賞勝馬などを出してきた。
そんなビッグサンデーだが、浦河町の日高スタリオンステーションで種牡馬として生き残るために、11年目のシーズンは試情馬としての役割も担うことになった。同スタリオンでは長くスーパークリークがその役割を務めてきたが、後継馬として白羽の矢が立てられたのがビッグサンデーだったのだ。来シーズンからは、いわゆる“二足のわらじ”を履くことになった。
「サンデーサイレンスの仔で激しいところもありますが、年齢的なこともあって落ち着きも見せています。よい試情馬になると思いますよ」と期待されている。「それに、ある程度の産駒を残すことができれば、南関東の桜花賞勝馬を出しているように地方重賞級なら十分に通用することを実績が示しています。まだ諦めるには早いと思いますし、可能性もあると思っています」と意欲を見せている。