アドマイヤジャパンを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション
月刊優駿誌上でも3か月連続で特集が組まれるなどレース前から“祝賀ムード”にあふれた2005年の菊花賞(G1)。史上2頭目となる不敗の3冠馬誕生が確実視されていたことは、単勝支持率79.1%という驚異的な数字にも表れている。
そんな確勝ムードの中「もし、ディープインパクトさえいなければ…」などという泣き言を言わず、諦めていない人と馬がいた。
父サンデーサイレンス、母は1995年の最優秀2歳牝馬ビワハイジ。弥生賞(G2)ではディープインパクトをクビ差まで追い詰め、皐月賞(G1)でも理想的なレース運びで内容のある3着と健闘したアドマイヤジャパンだ。ダービー(G1)は不本意な結果に泣いたが、その能力は世代トップクラスのものがあった。
そして迎えた菊花賞(G1)。陣営が選んだ作戦は“ディープインパクトの末脚が届かない位置で競馬をすること”だった。武豊騎手が長手綱で折り合いに専念しようというところ、大逃げをうったシャドウゲイトを積極的に追いかけ、3~4コーナーで一息入れると、横山騎手は残り400m地点で後続を突き放した。それは、定められた運命から逃れるための作戦にも見えた。
ディープインパクトには敗れたものの、3着馬には4馬身差。「馬は本当によく頑張ってくれた」という横山騎手のコメントには清々しささえ感じたものだ。
「現役時代もそうでしたが、種牡馬としてもディープインパクトやハーツクライなど豪華メンバーと一緒になって、ちょっとかわいそうな面もありますよね」とは現在アドマイヤジャパンを管理するブリーダーズスタリオンステーションの坂本教文主任だ。
それでも、11月14日現在で中央、地方で8頭が勝ちあがっている。「初年度産駒が次々勝ち上がってくれて胸をなで下ろしているところです。ダートもこなせそうなので幅が広がりますね」とほっとしたような表情だ。
普段は気の強い面を前面に押し出すそうだが。ステイゴールドだけには一目置いているらしく、同馬が移動してきてからは、やや遠慮がちらしい。「ステイゴールドもアドマイヤジャパンを意識しているみたいですよ。気の強い馬同士でけん制しあっているようです」とやや苦笑いだ。
生産者からの信頼と期待も厚く、スタッドインして4年連続100頭以上の繁殖牝馬が同馬の血を求めている。「産駒たちには10戦しか走れなかった父の分まで丈夫に、息の長い競走生活を送って欲しいですね」と期待されている。