馬産地コラム

カネヒキリを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2010年12月04日
  • カネヒキリ~1
    カネヒキリ~1
  • カネヒキリ~2
    カネヒキリ~2
  • カネヒキリ~3
    カネヒキリ~3

 「♪涙の数だけ強くなれるよ」

 (岡本真夜「TOMORROWより」/真名杏樹作詞・岡本真夜作曲)

 カネヒキリは挫折の中から生まれたチャンピオンだった。ディープインパクトと同じ2002年に同じノーザンファームで生まれ、同じセレクトセールで取引されたまでは良いが、すべての馬が目標とする芝コースでは良いところを見せられなかった。国内最強ダート馬の地位を築き上げ、大きな期待を背負って挑んだドバイワールドC(G1)では世界の壁を知った。

 屈腱炎、そして骨折。幾度となくカネヒキリには引退の危機が訪れたが、そのたびにそれを乗り越えた。

 3歳ダート3冠馬。2005年、2008年度JRA賞最優秀ダートホース。2008年には2年4か月の長期休養を乗り越えて、2年10か月ぶりのG1制覇。さらには1年余の休養を乗り越えてマーキュリーC(Jpn3)にも勝った。ブルーコンコルド、タイムパラドックス、ヴァーミリアン、サクセスブロッケンらを相手に世代を超え、そして怪我を乗り越えてチャンピオンとしての誇りを守り続けた。

 「何度も脚元を痛めていますし、引退の原因も屈腱炎の再発ですからね。入厩当初は元気がなかったですが、だいぶ元気になってきました」と優駿スタリオンステーションの山崎努主任がほっとしたように話してくれた。500キロを優に超える栗毛の馬体が朝日にまぶしい。放牧地ではいななくなど、まだ若さをアピールしている。カネヒキリの呼びかけにアドマイヤオーラが応える。現役時代は顔をあわせることのなかった2頭だが、何か通じ合うものがあるのかもしれない。

 「入厩時に出迎えた生産者の方たちは感じるものがあったようです。確かに凄い筋肉ですし、皮膚も良い。シーズンまではまだ時間があるので、焦ることなくじっくりと体を作っていきたい。きっと、凄い馬になると思いますよ」と楽しみにしている様子だ。