馬産地コラム

ダイタクリーヴァを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション

  • 2010年12月05日
  • ダイタクリーヴァ~1
    ダイタクリーヴァ~1
  • ダイタクリーヴァ~2
    ダイタクリーヴァ~2
  • ダイタクリーヴァ~3
    ダイタクリーヴァ~3

 人懐っこい馬だ。取材者の姿を見ると、ゆっくり、そしてゆっくりと近づいてきた。牧柵からクビを伸ばして、愛撫をねだる。目を細めた顔が妙にかわいらしい。激しいことで知られるサンデーサイレンスの血を引く馬としてはちょっと違和感がある。

 重賞5勝。G1競走でも2度も1番人気になったが、2着止まりだった。“G1競走に勝つだけの能力を持ちながらも運に恵まれない”という見方もあるが“G1競走に勝ちきるための何かが足りない”という意見もある。皐月賞(G1)はサンデーサイレンス産駒エアシャカールにクビ差交わされ、秋のマイルチャンピオンシップ(G1)はアグネスデジタルとの追い比べで1歩劣ってしまった。いずれも、競馬に勝って勝負に負けたような内容ではあったが、勝てるときに勝っておかないと、勝利の女神からはソッポをむかれてしまう。

 かつて、東洋太平洋バンダム級王座を12度防衛した村田英次郎という天才ボクサーがいた。WBCとWBAの双方の世界王者に挑戦し、不利な下馬評の中、いずれも引き分けで負けなかった。しかし、勝つこともできなかった。ダイタクリーヴァもそんなタイプだったのかもしれない。

 「2003年から2007年まではここ(ブリーダーズスタリオンステーション)にいたのですが、その後は近くのスタリオンで種牡馬生活を行なっていました。来シーズンはまたここで種牡馬生活の続行が決まってよかったと思っています」と同スタリオンの坂本教文主任が、にこやかな笑顔を広げた。

 ダイタクリーヴァの産駒は2006年にデビュー。種付けに恵まれているとは言いがたい状況の中、決して多くない産駒の中から2年目産駒のブライティアパルスが2010年のマーメイドステークス(G3)を制して初の中央競馬重賞勝ち馬となった。また3世代目産駒ベルウッドローツェはダイヤモンドS(G3)で2着。3世代目産駒のエレーヌはグランダムジャパンの3歳シーズンの初代チャンピオンにもなり、活躍の場を広げている。

 残念なことに、これらの活躍の多くが晩春だったことから、2010年の種付頭数は若干の増加にとどまったが、来シーズンは期待できそうだ。

 「決して繁殖牝馬に恵まれているわけではないけど、その中から走る馬を出すのだから、これからもっと活躍馬を出してくれるんじゃないですかね」と坂本さんは期待している。