スウィフトカレントを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション
ライバルの存在というものはありがたい。
勝って、負けて、切磋琢磨して。だから、例えばシンボリルドルフとビゼンニシキ、シンザンとウメノチカラのような関係はライバルとは呼びたくない。
近年で言えばウオッカとダイワスカーレット。オールドファンならテンポイントとトウショウボーイ。スピードスケートの加藤条治、長島圭一郎。女子フィギュアスケートのキムヨナと浅田真央。それは直接顔をあわせることのない、例えば早稲田実業の“ドラ1トリオ”のような場合もライバルに当てはまると思う。
「この2頭って、現役時代に顔をあわせたことありましたっけ」とブリーダーズスタリオンステーションの坂本教文主任から逆取材される。隣の放牧地では同じサンデーサイレンス直仔で、同じ社台ファーム出身。生まれた年も一緒なら、引退した年も同じというハイアーゲームがいる。
調べてみたら、たった1度だけ。ダービー(G1)への出走をかけた青葉賞(G2)で顔をあわせ、このときは2番人気のハイアーゲームが4番人気のスウィフトカレントを抑えて優勝している。早くから頭角を現して脚部不安に苦しみながらも重賞戦線で活躍したハイアーゲームと、ゆっくりと自己条件を勝ち上がって5歳夏の小倉記念で重賞初優勝を記録したスウィフトカレント。その対象ぶりはライバルにふさわしい。
「仲が良いのか、悪いのかよく分からない面があるのですが、とにかく意識しあってますね。馬同士でなんかあるのでしょうね」という。この人は、ちょっと言葉を濁すが、本当に馬のことをよく観察している。種牡馬生活1年目を終えて「サンデーサイレンスの仔ですから、おとなしくはないですが、ちゃんと言う事は聞くし、人懐っこい面もあるんですよ。頼もしいくらいのやんちゃ加減です」という。
そんな話を聞いていると、ハイアーゲームが走り出せばスウィフトカレントも走り出し、スウィフトカレントがいななけば、ハイアーゲームもそれに応える。
「種付頭数も同じくらいでした(スウィフトカレント67頭、ハイアーゲーム72頭)ので、これからもライバルとして長く、しのぎを削り合って欲しいですね」とスタリオンスタッフから見守られている。