馬産地コラム

サイレントディールを訪ねて~ブリーダーズスタリオンステーション

  • 2010年11月27日
  • サイレントディール~1
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  • サイレントディール~2
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  • サイレントディール~3
    サイレントディール~3

 「どこか、憎めない馬なんですよ」と同馬を管理するブリーダーズスタリオンステーションの坂本教文主任が言う。栗毛の大流星。体高170センチの大型馬は嫌でも目立ってしまうが、その大きな体を隠すように放牧地ではじっとしている。

 「サンデーサイレンスの仔ですから種付けのときなんかは気合が入りますが、それ以外ではあまり目立つのが好きじゃないみたいですね」とスタッフからもかわいがられている。

 いま、思い返せばサイレントディールの現役時代もそんな足跡だった。父サンデーサイレンス、母フェアリードール。エリザベス女王杯(G1)に優勝し、ドバイワールドC(G1)で2着と大健闘したトゥザヴィクトリーの全弟。セレクトセールで1億円以上の値がついたのも、ある意味では当然だった。圧倒的1番人気に支持された新馬戦を楽勝したが、スポットライトを全身に浴びたのはそこまでだった。

 朝日杯フューチュリティS(G1)では前半5ハロンを56秒9の猛烈なラップを踏んだが、レコード決着の演出家的役割を演じ、その後シンザン記念(G3)を楽勝するもののきさらぎ賞(G3)、皐月賞(G1)、ダービー(G1)ではネオユニヴァースの引き立て役に甘んじてしまった。

 秋になって姉が開花してダート路線を歩み、武蔵野S(G3)を4馬身差圧勝。ダート界の新星登場と言われたがJCダート(G1)7着、東京大賞典(G1)7着と人気を裏切ってしまった。500キロを優に超える大型馬が居場所を探していた。そして姉のあとを追うようにドバイへ遠征したが、傷心の帰国となった。

 「期待が大きすぎたのかもしれませんがサンデーサイレンスの直仔で芝ダート双方の重賞勝馬です。とくに武蔵野S(G3)では初めてのダート競馬だったのにも関わらず、歴戦の古馬を相手に楽勝しているのですからたいしたものです」と坂本主任。

 供用2年目は少々人気を落としたが「産駒数は多ければ多いほど良いですけど、それでも期待できる数は確保できたと思います。初年度産駒の何頭かは見ましたが、父親とよく似た手足の長い体型が多いようです。芝ダートの両方に適性のあるオールラウンダーが多いのではないかと期待しているんです」と産駒のデビューを心待ちにしている様子だった。