馬産地コラム

スズカフェニックスを訪ねて~アロースタッド

  • 2010年11月14日
  • スズカフェニックス~1
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 激しい馬だ。いつも、何かにイライラしているようにも見える。そうした気分を解消させるためかどうかはわからないが、寝転ぶことが大好きだ。下が濡れていようが、ぬかるんでいようか、全くお構いなし。冬になれば馬服を着せられるが、それでも平気で寝転ぼうとする。

 「だから、担当者は大変なんですよ」とちょっと同情的なのはアロースタッドの本間主任だ。夏から冬は種牡馬のシーズンオフ。放牧の時間が終わると、それぞれの担当者が体についた泥を落とし、そして種牡馬の1日は終わる。翌朝、放牧されるとひとしきり走り回ったあと、すぐにゴロンとするらしい。

 「確かに神経質な面もあるけど、サンデーサイレンスの仔ってそんなところがあるんですよ」という。いつも神経をピリピリさせていたサンデーサイレンス。それは大なり小なり産駒に受け継がれ、繊細な気性は激しさへと転化し、それはSS系の証のようなものにもなっている。「だから、この馬の激しさはサンデーサイレンスらしいのかなって、そう思います」という。

 ただし、その激しさを巧みに隠して種付けに関しては意欲的で、前向きだという。「サンデーサイレンスの仔たちは、種付けが好きなんですよ」という社台スタリオンステーションの徳武氏の言葉を思い出した。そんなところが、実にサンデーサイレンス直仔らしい。

 現役時代は、その激しい気性を瞬発力にかえて堅実に実績を積み上げた。29戦中、掲示板を外したのはわずかに4回。デビュー戦を除けば、G3以下の競走で掲示板を外したことはない。前半は後方に位置し、直線に向かうと後方から脚を伸ばしてきた。キャリアの浅いうちは長い距離を使われていたが、この馬の適性を短い距離と判断した陣営はオープン入りしてからは徹底してマイル以下の路線を歩ませている。

 「ここ(アロースタッド)に来ることが決まる前から、いつも、この馬の馬券は買っていたんです。悔しい思いもしたけど、ゴール前ではいつも本当に楽しませてもらいました」というスタッフもいた。

 その悔しさは産駒に晴らしてもらおう。数いるサンデーサイレンスのG1ウイナーの中でも、屈指の瞬発力を受け継ぐ産駒がターフをにぎわせるのは2012年だ。