アジュディミツオーを訪ねて~アロースタッド
かつて、日本全国にヒーローがいた。“野武士”などと称された馬たちが中央競馬のエリートたちに立ち向かっていく。そんな図式が確かに存在していた。オンスロート、ゴールデンウエーブ、オパールオーキット、ヒカルタカイ。そしてハイセイコーを経てハツシバオー、カツアール、ホスピタリティ、サンオーイ、ジュサブロー、ロッキータイガー、オグリキャップ、イナリワン、メイセイオペラなど等。
もうひとつのニッポン競馬、それが地方競馬だった。いつしか格差は広がりコスモバルクのような特殊な例を除いて、今では地方競馬出身馬がJRAの重賞レースを賑わせることすら、夢幻のような、そんな気がする。
そんな時代の中、地方競馬関係者にとって夢であり、誇りであり、心の支えになった馬。それがアジュディミツオーだ。
・2004NARグランプリサラブレット3歳最優秀馬
・2005NARグランプリ年度代表馬&サラブレット4歳最優秀馬
・2006NARグランプリ年度代表馬&サラブレット4歳最優秀馬
・2009NARグランプリ特別表彰馬
4歳時には地方競馬所属馬として初めてドバイワールドC(G1)に出走し、同年の東京大賞典(G1)では史上初めて同レースの連覇を成し遂げた。また5歳時の帝王賞(G1)では2分2秒1のコースレコードでカネヒキリを封じ込めた。そして、この勝利によって同馬は史上初めて南関東の古馬G1レースを完全制覇することになる。まさに道なき野を行く快進撃だ。そんなアジュディミツオーのレースには、狂気にも似たスピード、スタミナ、パワーが表現されていた。
それは、種牡馬となった今も変わることなく、ベテラン揃いのアロースタッドのスタリオンスタッフをもってしても「油断できない馬」という評価につながっている。
「放牧地ではおとなしくしているんです。それは種付けになると変わってくる」と同スタッドの本間一幸主任がいう。「パワーだけでなく、俊敏さも備わっている。身のこなしが柔らかい。だから、あんな競馬ができたんだね」と感心しきり。気性の強さは父アジュディケーティングゆずりだそうだ。「アジュディケーティングも、もう23歳。ちょうど良いタイミングで最高の後継種牡馬が出てきてくれました」と声が弾む。この夏は多くのファンが同馬を訪ねてきたそうで、人気者揃いのアロースタッドにあっても人気はピカイチだったという。
「この馬の良いところが産駒に伝われば、結果は出せると思う。ファンのためにも頑張りたいですね」と期待されている。