エイシンデピュティを訪ねて~レックススタッド
新ひだか町静内目名のレックススタッドはヨーロッパ風の建物が美しい大型スタリオンだ。整然と並べられた放牧地には数々のG1ウイナー、海外からの輸入種牡馬が放されている。その中心あたりにエイシンデピュティがいる。2月の展示会からひとまわり貫禄がついたようにも見える。
「よく食べるんです。ほおっておけば、1日中草を噛んでいるような、そんな馬です」とスタリオンスタッフが本馬の現況を話してくれた。栗毛の馬体は緑の草と、そして白い牧柵によく似合う。ボリッ、ボリッと草を噛む音が聞こえてくると、時が経つのも忘れてしまうほどの牧歌的風景となる。
「基本的にはおとなしい馬です。ただ、何か気に入らないようなことがあればカッとなるんですよね。何が気に入らないのかよくわからないときがあるんですけど」と笑った。
変幻自在の逃げ戦法。エイシンデピュティの現役時代はそんなレースぶりでファンを沸かせた。決してスタートダッシュのよい馬ではない。500キロ近い体全体を使って、徐々に加速する。それはまるでディーゼルターボのような力強さだ。やや重馬場のエプソムC(G3)が前半1000㍍60秒7。おなじやや重馬場の金鯱賞(G2)は59秒9。重馬場発表だった宝塚記念(G1)は60秒6。馬場差を考慮しても決して速くはない。エイシンデピュティがハナに立つと、ペース全体が落ち着きを見せる。2008年春のグランプリ、宝塚記念(G1)では早めのスパートからメイショウサムソン、アサクサキングス、カンパニー、エアシェイディといったライバルたちの追撃を押さえ込んだ。
「クロフネやノボジャックを見てもわかるように、フレンチデピュティは高い確率で能力を伝えます。そういう意味では宝塚記念でG1レベルの競走能力を証明できたことは大きかったですね」と事務局。「それから、成長力ですね。5歳の春に3連勝でトップクラスに駆け上がり、6歳時はさらにパワーアップしました。さすがに脚部不安で1年休んだあとは粘りを失いましたが、あの成長力は産駒に伝わると思います」と期待している。初年度は無難に56頭の繁殖牝馬へと種付を行なった。「欲を言えばキリがないですが、オーナーを中心に良血繁殖が揃った」というから量より質の56頭といえそうだ。
待望の初年度産駒は2011年春に産声をあげる。