ダイタクリーヴァを訪ねて~HBA門別種馬場
日高町の日高軽種馬農協・門別種馬場へダイタクリーヴァ(雅牧場生産)を訪ねた。現役時代は重賞5勝、クラシックでも好走し、G1勝ちの記録がないのが不思議なほどの実力をファンの記憶に焼き付けた。このほど、産駒がJRA初重賞制覇を果たし、地方競馬ではダービー馬を輩出。種牡馬としも評価を上げているところだ。
虫の声が鳴り響く夏の日、青々とした放牧地へ会いに行くと、均整のとれた栗毛の馬体が映えていた。目元に届くほどの長い前髪がトレードマークだ。同種馬場の山口幸敏場長に近況を伺うと、「体調面は特に問題ありません。まだ13歳ですし、馬は若いです。先日のブライティアパルスは本当に嬉しい重賞制覇となりました。近年の種付け頭数は決して多くはありませんが、その中からよく産駒が走っていると思います。」と、笑顔で話す。今季は16頭の交配をこなし、オフシーズンとなった現在は朝5時30分から午後2時まで放牧地でのんびりと草を食む。
今年の種付けシーズンは各地の競馬場から朗報が相次いだ。2月にベルウッドローツェがダイヤモンドS(G3)で2着に奮闘したのを皮切りに、名古屋で牝馬エレーヌが5連勝で東海ダービーを制覇。上半期の締めくくりには自身と同郷のブライティアパルスが、牝馬重賞マーメイドS(G3)で待望のタイトルをもたらした。山口場長は産駒について、「産駒は芝ダート問いませんし、距離も短距離型もいれば、長距離を得意とする馬もいて、様々なタイプの馬を出しています。全体的にバランスの良さを感じる馬が目立ちます。」と、分析する。現役時代とりわけ強さを発揮したマイル戦で武器とした持続的なスピードが、産駒に良いエッセンスを与えているようだ。ダイタクリーヴァ自身はダートでの出走経験はないが、ダートのG1馬を輩出している父フジキセキの流れを受け継ぎ、地方競馬の力の要るダートで素晴らしい走りを見せる産駒も登場している。
種牡馬としての成功には母系の良さも重要なポイントの一つ。ダイタクリーヴァの半弟は長距離戦で一線級相手に好戦したダイタクバートラムで、伯父には名マイラー・ダイタクヘリオスがいる。山口場長は実績馬多数の血統に太鼓判を押している。「優秀な母系ですし、血統的には種牡馬として成功する素質を十分に秘めた馬だと思います。今度は産駒にG1勝ちを果たして欲しいですね。」と、願いはひとつ。ダイタクリーヴァ自身が果たせなかったG1勝ちへ産駒に思いを込める。