馬産地コラム

テンシノキセキを訪ねて~駿河牧場

  • 2010年06月22日
  • テンシノキセキ
    テンシノキセキ
  • テンシノキセキ~2
    テンシノキセキ~2
  • テンシノキセキ~3
    テンシノキセキ~3
  • テンシノキセキ2010~1
    テンシノキセキ2010~1
  • テンシノキセキ2010~2
    テンシノキセキ2010~2
 短距離路線で活躍し、2つの重賞を制したテンシノキセキ(牝12歳、父フジキセキ 母ビーバップアルー)を浦河町の駿河牧場に訪ねた。

 本馬は2000年10月に栗東・橋口弘次郎厩舎よりデビュー。新馬戦→福島3歳ステークス→フェアリーステークス(G3)と3連勝し、非凡なスプリント能力を見せつけた。古馬となってからも1200m戦を中心に戦い、5歳の秋にはセントウルステークス(G3)で、高松宮記念(G1)を勝ったビリーヴを破って重賞2勝目を挙げた。残念ながらG1のタイトルには手が届かなかったものの6歳シーズンの春まで長きに渡って活躍し25戦9勝の成績で引退、繁殖入りした。

 「私は滅多に競馬場には(生産馬の)応援に行かないのですが、この馬の引退レースになった2004年の高松宮記念(G1)だけは、橋口調教師からも『最後のレースになるんだから』と言われて見に行きましたよ。」と語ってくれたのは駿河牧場の代表である川又政之さん。本馬は川又さんにとって特別な存在だそうだ。

 繁殖牝馬として牧場に戻って来たテンシノキセキだが、初年度に橋口調教師の強い勧めで種付けしたサクラバクシンオー、2年目のクロフネと不受胎が続いたが、3年目に配合したタイキシャトルが無事に受胎し、2007年に念願の初産駒が誕生した。

 「この血統だけは門外不出、牝馬は牧場から他所には出したくない。」という川又さんのこだわりから、初仔のタイキシャトル産駒は「カレンナホホエミ」と名付けられ川又政之氏ご自身の馬主名義で昨年デビューし、新馬戦→フェニックス賞と見事2連勝を飾った。カレンナホホエミはその後のレースでは精彩を欠いているが、「まだまだ諦めていませんよ、きっと夏にはまた活躍してくれるでしょう。」と期待している。

 2番仔で今年デビューを迎えるサクラバクシンオー産駒(競走馬名キミニアエタキセキ)も、今年生まれたクロフネ産駒も引退後は牧場に帰って来る事になっているそうだ。「テンシの仔はサンデーサイレンスの孫種牡馬と付けられるんですよ。将来的な配合を考えるのも楽しみですね。」と語る川又さんだ。(例えばディープスカイ×カレンナホホエミの配合でサンデーサイレンスのS3×M4になる)

 今年はクロフネの牝馬を出産した。「生まれたときは柔らかい感じでしたが、ずい分と体がしっかりして来ました。気性が良いのは母譲り、今は母のような栗毛馬に見えますが、まぶたの回りに白い毛が混ざっているので、おそらく父のような芦毛になると思います。」と川又さん。サンデーサイレンスの孫種牡馬が付けられるという血統背景から、競走生活だけでなく引退後の後継繁殖牝馬としても期待しているそうだ。


 「とにかくこの馬ほど頭の良い馬は知らないですよ。」と本馬をベタ褒めの川又さん。本馬の産駒には母の届かなかった短距離G1をぜひ獲得してもらいたい。