馬産地コラム

ミスターヤマノを訪ねて~高橋啓牧場

  • 2010年02月19日
  • 高橋啓牧場にて余生を過ごしているミスターヤマノ
    高橋啓牧場にて余生を過ごしているミスターヤマノ
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 1990年の小倉大賞典(G3)の勝ち馬ミスターヤマノ(松田三千雄氏生産)を訪ねた。現在は平取町の高橋啓牧場で静かに余生を過ごしている。

 ミスターヤマノを管理する同牧場スタッフの高橋明里さんに近況を聞くと、「こちらの牧場にきて4年目になりますが、病気で獣医さんに診てもらったことは一度もなく、健康そのものです。少し筋肉が落ちてきた感じはありますが、食欲旺盛で体調は安定しています。」とのことで、25歳となった今も健在だ。冬季は馬服を着せて、朝8時から夕方4時まで放牧しているそうだ。

 現役時代は芝中距離で勝ち星を積み重ね、小倉大賞典(G3)では実力馬ラッキーゲランや後にG2を2勝するオースミシャダイを下し、2着馬に8馬身もの差をつけて鮮やかに栄冠をものにした。アンバーシャダイの産駒として最初に重賞を制した馬であり、長きにわたって頼れる内国産種牡馬として活躍したアンバーシャダイの評価を真っ先に高めた一頭といえよう。

 放牧地へ会いに行くと、舌をペロッと出して愛嬌のある顔をのぞかせていた。一緒に放れている功労馬のイースタンフラワー号とは明里さん曰く“大の仲良し”だそうで、親友と共に元気に雪上を歩いていた。明里さんは、「これからも長生きして欲しいです。」と、温かく声をかけた。

 このほど、第27回フェブラリーS(G1)が行われる2月21日、東京競馬場の最終レースに行われる「東京ウインタープレミアム」のレース名が、JRAホームページでの投票によって「メイセイオペラメモリアル」に決まった。ミスターヤマノのいるこの牧場は1999年のフェブラリーS(G1)優勝馬メイセイオペラの故郷でもある。

 同牧場の高橋啓さんは、「たいへん光栄に思っています。オーナーも喜んでおりました。レースから10年以上経っていますが、こうして数多くの方に選んでいただけて本当にありがたいです。」と、感謝でいっぱいのご様子だ。

 当時、地方所属馬として初の中央競馬G1制覇の偉業にファンからは喝采が起こった。啓さんは、「オリンピックの選手一人に大勢の協力が必要なのと同じで、一頭の馬にも多くの人の手がかかっています。メイセイオペラのフェブラリーS(G1)勝利は、みんなが一丸となって金メダルを獲ったような思いです。口取りに並んだ時は足が宙に浮いているようでした。」と、当時を振り返った。2月21日はこの地で育った栗毛馬を沢山の競馬ファンが思い出すことだろう。
取材班