2003年のＮＨＫマイルカップＧⅠ優勝馬ウインクリューガーを浦河町・日高スタリオンステーションに訪ねた。

　マイルのＧⅠを優勝し、スプリント・マイル路線での華々しい活躍が期待されたウインクリューガーだったが、その後は苦戦続き。ダートレースを試したり、極端な集中ローテーションを組んだりと、当時は陣営の苦悩が伝わってくるようだった。障害レースで4年2ヶ月ぶりの勝利を果たし、新たな活躍の舞台を見つけた矢先に屈腱炎で引退となった。

　ウインクリューガーが“苦悩のＧⅠ馬”として試行錯誤を繰り返していた時代に現れたのが、２歳年下で“英雄”と呼ばれた三冠馬・ディープインパクト。そのディープインパクトの近親という血統背景も評価され2008年より、日高スタリオンステーションで種牡馬入りし、初年度は15頭の繁殖牝馬を集めた。

　（余程うれしいのか？）種付けのときに奇声を上げて大騒ぎするという事で、昨年はスタッフの手を煩わせたウインクリューガーだが、２年目を迎え放牧地ではずいぶん大人しくなったそうだ。それでも“馬っけ”は相変わらず強いようで、日高スタリオンの高台から見下ろせる牧場の牝馬の動向や、隣の放牧地に居る芦毛のスピードワールドを気にしてウロウロしている。

　本馬はクラブ法人の所有によるＧⅠウイナーという事で、現役時代に出資していた会員さんからは今も愛されている。栄光と挫折を共に味わった会員さんだけに愛情も深いのだろうか。昨年の夏は多くの会員さんが会いに来てくれて、中には馬服や手入れ道具を差し入れてくれた方も居たそうだ。近親ディープインパクトに比べれば1/10以下の種付け頭数だが、会員さんの夢が叶うような産駒の活躍に期待したい。

　日高スタリオンは海岸沿いの高台に位置し、浦河沿岸の太平洋を望むことが出来る絶好のロケーションだ。夏のシーズンには、周辺の国道235号線沿いに日高昆布や朝イカの直売所もある。“馬と旨いもん”を一度に楽しめるのも馬産地・浦河の魅力だ。