馬産地コラム

オフサイドトラップを訪ねて~新冠 明和牧場

  • 2009年02月23日
  • オフサイドトラップ~新冠 明和牧場
    オフサイドトラップ~新冠 明和牧場
  • 同

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  • 放牧地の奥にはビッグレッドファームの屋根付き坂路がある
    放牧地の奥にはビッグレッドファームの屋根付き坂路がある
 1998年の天皇賞(秋)優勝馬、オフサイドトラップがケンタッキーファームより新冠町の明和牧場へ移動した。
 ケンタッキーファーム時代の彼の放牧地付近には、その名にふさわしくサッカーのゴールと芝生があった。新居の明和牧場は小高い丘の上にある。今は向かい側にあるビッグレッドファームの坂路を眺めながら、静かに雪解けを待っていた。

 明和牧場への移動もうまくいったようで、新しい環境にもすっかり慣れた様子。
 「思ったより小さいかな。ゴロっとして首が太いと思った。」
管理する明和牧場の浅川明彦さんが第一印象を話してくれた。到着後も健康面の問題はなく、メニュー替わりの飼い葉もすんなり受け入れたと語る。
 「賢い馬でね。1回で何でも覚えるよ。やっぱり走る馬は脚が違うわ。他の馬とは違うよ。」
と、長年のホースマンの目にはGⅠ馬の馬体の凄さが映っている。
 ケンタッキーファームにいた頃からのグイッポ癖(柵などに歯を当てて首を伸ばしゲップする癖)は相変わらずなようだが、
 「厩舎内ではやらなくて、放牧地の柵だけでやるみたい。」
と変わった一面も持ち合わせているようだ。

 現在は朝6時に飼い付けをした後、正午頃まで放牧に出している。夏場は暑い時間を避けて放牧し、それ以外の時間は夏負けしないように舎飼いするという。驚いたのは馬房内に敷く寝ワラの量だ。床一面盛り沢山のクッション。これほど敷いている牧場も珍しい。
 「みんなそれを言うのだけど、これが普通だと思っている。」
と、浅川さん。これなら何度寝返っても心配ご無用、馬としたら丸一日馬房にいても気持ち良く過ごせるだろう。

 功労馬の預託を中心業務に衣替えした明和牧場のカタログには“馬は消耗品にあらず”とある。サラブレッドは手間もかかるしお金もかかる。その一方で大金にもなる。まさに経済動物なのだが、その全てが長生きできることは難しい。種牡馬生活を引退してもなお、ふかふかの寝室が待っているオフサイドトラップにとっては、この上もない別天地に来たようだ。他の馬の分までゆっくりと余生を過ごし長生きして欲しい。

              日高案内所取材班