馬産地コラム

イクノディクタスを訪ねて~新冠 五丸農場

  • 2009年02月24日
  • 五丸農場の風景(イクノディクタスとアンベリール)
    五丸農場の風景(イクノディクタスとアンベリール)
  • イクノディクタス(“北海道”模様の鼻白)
    イクノディクタス(“北海道”模様の鼻白)
  • イクノディクタス(“北海道”模様の鼻白)
    イクノディクタス(“北海道”模様の鼻白)
  • アンベリールとの親仔ツーショット
    アンベリールとの親仔ツーショット
競走成績51戦9勝、3歳の夏にデビューし7歳の秋までタフに走り続け、重賞3勝(旧年齢表記)。1993年の安田記念GⅠ、宝塚記念GⅠでは並み居る牡馬を相手に連続して2着、当時の牝馬としては初の獲得賞金5億円を突破、一時は歴代賞金女王の座につき「鉄の女」と呼ばれたイクノディクタスも今年22歳。昨シーズンを最後に繁殖牝馬を引退し、功労馬として余生を過ごす事になりました。

1994年の繁殖入りから、イクノディクタスを繋養してきた新冠町・五丸農場を訪ね、イクノディクタスの近況と今後について、社長の五丸忠雄氏に話を伺いました。

『1993年の宝塚記念ワンツーを決めた夢の配合』と競馬ファンの注目を集めたキソジクイーン(父メジロマックイーン)を初仔に、14シーズンで11頭の産駒が誕生と、仔出しの良さを誇りましたが、残念ながら目立った活躍馬は登場していません。15シーズン目となる昨年も、ノーリーズンを配合しましたが残念ながら早くに流産。「まだまだ体も若いけど、頑張ってくれたから、そろそろゆっくりさせてやろう」と、繁殖牝馬からの引退を決断されたとの事。

功労馬といっても、生活が大きく変わる事もなく、今まで通り放牧地で他の繁殖牝馬たちと一緒に放牧されています。五丸農場には現在、イクノディクタスの血を引く繁殖牝馬が2頭繋養されていますが、この日は5番仔となるアンベリール(父サクラローレル)と一緒に放牧されていました。シーズンによっては3番仔のイクノハレスガタ(父アルカング)も一緒に、栗毛の親仔3頭が揃い踏みする事もあるそうですが、「知ってか知らずか親仔関係は希薄で、イクノディクタスはあまり他の馬に干渉しないね」との事。

そんなイクノディクタスは、長らく放牧地の「ボス」として君臨していたのだが、一昨年移動してきた芦毛のヤチブキ(岩手競馬・未勝利)と激しいボス争いを繰り広げた末に敗北、ボスの座を明け渡してしまったそうだ。「うちの馬は未勝利馬なのに、(イクノディクタスから)ボスの座を奪って申し訳ないね~(苦笑)」と、ヤチブキの生産者さんも恐縮していたそうだ。

イクノディクタスには、今でも多くの競馬ファンが会いに来るそうで、毎年誕生日の4月16日には、電報や、にんじん、りんご等が贈られてくるそうだ。筆者も毎年、五丸農場のある新冠の三叉路で道路からカメラを構えるファンを度々見かけるが、その度にイクノディクタスの根強い人気には驚かされる。「年間見学可能」でファンを受け入れてくれる五丸農場に感謝したい。

最後の仔となる「イクの08(父ノーリーズン)」を見せて頂いた。「イクノディタスの繁殖は、うちの牧場に2頭、他にも2頭居るので、隔世遺伝でもいいから、走る仔が出てくれればいいね~」と語る五丸氏の熱意が花開く日を期待したい。

日高案内所取材班