馬産地コラム

あの馬は今Vol.65~カネツフルーヴ

  • 2010年02月10日
  • 優駿SSで種牡馬生活を送っているカネツフルーヴ
    優駿SSで種牡馬生活を送っているカネツフルーヴ
  • 同

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2003年1月29日 川崎記念(G1)
優勝馬:カネツフルーヴ

 真っ白い雪の上を、真っ黒な馬が気持ち良さそうに闊歩している。新雪を踏みしめながら近づくと、それに気付いた馬が牧柵の近くまで歩いてくる。人懐っこい馬だ。

 「気が強い面もないわけではないのですが、普段はのんびりしていることが多いですね。ただ、大きな馬ですからパワーはありますよ。とくに、種付のときはすごいですね」と優駿スタリオンステーションの山崎努さんがおどけたような表情をみせる。

 南関東を代表する名牝ロジータの6番仔として新冠の高瀬牧場で生まれ、芝でもスプリングS(G2)3着という実績があるが、本当の意味で力を発揮したのは、やはりダート競馬。それも逃げるようになってからだった。しかし、重賞級に出走するようになると、その大きな体をかがめるように好位からの競馬を試みられていた。

 実際、前年春の帝王賞ではサプライズパワーの2番手から4コーナーで先頭にたって完勝している。しかし、JBCクラシック(G1)3着は一度は先頭にたったもののアドマイヤドンの3着にやぶれ、JCダート(G1)、東京大賞典(G1)では見せ場つくれずに敗れていた。コンビを組んで19戦目。誰よりもカネツフルーヴのことを知る松永幹夫騎手には心中期すものがあったのかもしれない。

 4番人気とはいえ9頭たての4番人気。JRA勢4頭の中では最低人気での出走だった。しかし、ゲートが開くと松永騎手に迷いはない。ペースなどお構いなしとばかりにどんどん差を広げる。最初の200mは6秒9だったが、その後は10秒4~11秒9~12秒3~11秒9とハイラップを刻む。2週目1~2コーナーで一息入れたが、向こう正面に入ると最後の力を振り絞るように再びペースをあげる。離れた好位勢がバテるほどのハイペースだ。3コーナーに入ると、さすがにカネツフルーヴの脚も鈍ってきたが、後続勢もスタミナを奪われていて追いかける事ができない。あがり3ハロン42秒1。それでも、たった1頭だけ綺麗な体でゴールした。母が引退を飾った伝統の川崎記念から13年目のゴールだった。

 そして、2010年新春。「去年(09年)、おととし(08年)と寂しいシーズンでしたが、今年は忙しくなると良いですね」という。初年度は9頭に種付したが、生まれた産駒はわずかに1頭。受胎率に不安を残しながらの種牡馬生活スタートとなったが、2年目は17頭に種付して10頭が生まれ、出走した7頭中4頭が勝ちあがっているように、まずまずのスタートだ。

 「年末は雪が少なかったから、少しは降ってくれた方が馬の脚のためには良いんですよね」と大きな体を気遣う。種牡馬6年目のシーズンは、もう目の前だ。
取材班