馬産地コラム

あの馬は今Vol.62~タイムパラドックス

  • 2009年12月07日
  • ビッグレッドファームにて種牡馬生活を送っているタイムパラドックス
    ビッグレッドファームにて種牡馬生活を送っているタイムパラドックス
  • 同

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  2004年11月28日 ジャパンカップダート(G1)
  優勝馬:タイムパラドックス

 時代が21世紀を迎えようとした頃、日本の競馬が大きく変わろうとしていた。2000年。生産者と地方競馬の祭典「JBC競走」の胎動がはっきりと感じられるようになり、JRAでは春のフェブラリーS(G1)、秋のジャパンカップダート(G1)を中心としたダート競走の体系づけられるようになった。タイムパラドックスがデビューしたのは2001年春。まさに、日本の競馬に新しい一面が加えられようとした、そんな時代だった。

 「この馬のおかげで日本中を旅することができました」とは大手牧場に勤務する同馬の一口会員だった某氏だ。JRAでは関西を中心とした6競馬場に出走し、地方交流競走では旭川、金沢、大井、船橋、川崎、盛岡、名古屋と東日本エリアへと積極的に出向いた。そんな楽しみ方も競馬にはあって良いと思う。

 そうやって積み上げた勝星は16。これは、グレード制制定後に記録した最多勝。稼ぎ出した賞金は9億7786万5000円。同じ年に生まれたアグネスタキオンやジャングルポケット、マンハッタンカフェ、クロフネを抑えての世代賞金王だ。まさに時代が生み出したヒーローだ。

 そんなタイムパラドックスがもっとも輝いたのは2004年のジャパンカップダート(G1)。アメリカ、ドイツ、そしてイギリスからの参戦馬もあったが、常に同厩舎で1番人気のアドマイヤドンを見るような位置で競馬を進め、4コーナーで空いたインコースを突くと、そのままゴールへと飛び込んだ。それは、フェブラリーS(G1)で、帝王賞(G1)で、JBCクラシック(G1)で、後塵を拝したアドマイヤドンを大一番で打ち破った瞬間でもあった。

 その後、8歳まで現役競走馬を続けJBCクラシック(G1)2連覇で有終の美を飾った同馬は、ビッグレッドファームで種牡馬生活を送っている。2007年のスタッドインから毎年100頭前後の繁殖牝馬に種付をこなす人気種牡馬だ。「マイペースというか、動じない馬というか。ほかの馬の動きと関係なく、動きたいときに放牧地をちょこまかと動きまわっています。ちょっと背の低い馬ですが、牝馬に負担をかけないように上手に種付をしてますね」とスタッフの評判は上々だ。

 待望の初年度産駒は来春にデビュー予定。「成長力はお墨付きだと思うのですが、現段階の動きも良いようですよ。ダートだけではなく、芝コースへの対応力もあるような気がするんです」と事務局では期待している。
取材班